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川口和久WEBコラム

マイナーチェンジ、巨人・菅野智之の新スタイルは本物か?/川口和久WEBコラム

 

腰の回転にアーチが加わった


フォームを改造した菅野


 6月19日の開幕に向け、練習試合が着々と進んでいる。
 各球団の開幕投手も見えてきたが、巨人はもちろん、菅野智之だ。
 2日、火曜日の練習試合(東京ドーム)の西武戦で登板したが、ほかの候補選手は、この日、投げていない。
 中6日と考えれば、19日がそうであるように、5日の金曜日に投げさせるはずだ。実際、8球団の開幕投手候補が5日に投げていた。
 たぶん菅野は中5日と考えているのではないかとも思うが、それは始まってみての楽しみにしよう。

 2日、俺は解説者としてのリハビリ(?)も兼ね、菅野の投球を食い入るように見た。
 感想は絶賛しかない。いい要素ばかりが詰まっている。今年、試合数は減ったが、中5日で行くなら20勝もできるかもしれない。

 菅野は超一流の投手だが、あえて欠点を探すなら、1年間、好調を維持できず、勝ち星が意外と伸びないことがある。あとは昨年パンクした腰だが、これに関しては最近状況を聞いていないので分からない。

 話題になっているフォーム変更は、見た目としては、上半身をぐっとひねってから下半身をひねる。野茂英雄(元近鉄ほか)のトルネード投法のようでもあり、大変更に思われるかもしれないが、実際は、車で言えばマイナーチェンジだと思う。

 この件に関しても菅野と話してはいないので分からないが(解説者として取材不足で申し訳ないが、コロナで球場に行けないのだ!)、いろいろな人のアドバイスがあってのことだと思う。
 ただ、これで俺が彼の課題だと思っていたことがクリアできた。

 従来の菅野のフォームは真っすぐ立って足を上げ、ねじれもほとんどなく、そのまま打者に向かい体重移動をする。あとは突き出した左腕をうまく使いながら、体の開きをギリギリまで抑え、腕を振るというものだった。
 当然、打者からは球の出所が見えづらく、しかも球は速いし、制球力もいい。完成度は極めて高く、文句の言いようがない。

 ただ、あのフォームだとムラが出るとは思っていた。
 以下、少し理屈っぽくなるが、説明しよう。

 従来の菅野のフォームは腰の回転がサイドスローのような横回転になっていた。
 それがなぜ悪いのかと言えば、球の回転だ。この腕の振りだと、どうしても球にきれいなタテ回転がかけづらい。菅野は、それでも調子がいいときは素晴らしい軌道の球を投げていたが、彼が崩れるケースを思い出してもらえば分かるだろう。
 インコースがシュート回転して早めにボールコースに抜ける、アウトコースのスライダーが引っかかってボール球になる。結果的には、ストライクを取るため真ん中付近に投げ、とらえられる。

 もともとシュート回転の真っすぐが持ち球で、それ自体は別にいいのだが、横回転系が入りやすいことで、どうしてもボールの軌道にばらつきがあった。

 話を新フォームに戻そう。
 彼がどういう意図でフォームを変えたのかは分からないが、今回の投げ方で生まれたのは下半身のねじれだ。
 ここで軸足に一度ためができたことで、結果的には横回転にプラスし、右腰の上がって下がる動きが加わり、丸いアーチ(橋)ができた。
 簡単に言えば、サイドスローからオーバースローの腰の動きになった、ということだ。

 これによって、ボールの性質が完全に変わった。ストレートに角度がつき、球がきれいなタテ回転となり、感覚的な表現だが、押し込めるようになった。
 プラス効果がフォークだ。これがタテに落ちるようになった。2日の西武戦で、西武の強打者が菅野のボールになるフォークを空振りしていた。もともと彼のフォークは見極められることが多かっただけに大きな変化だ。

 おそらく故障や疲労の蓄積にさえ注意すれば、大崩れすることはないだろう。すごい選手だね。

写真=BBM

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