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球春、ついに来たる――指揮官が明かす“2020年のベイスターズ”/FOR REAL - in progress -

 

優勝を目指して戦う横浜DeNAベイスターズ。その裏側では何が起こっているのか。“in progress”=“現在進行形”の名の通り、チームの真実の姿をリアルタイムで描く、もう一つの「FOR REAL」。


 列島に梅雨前線が横たわっていようとも「春」の一字を用いたい。

 巣ごもりの季節のあとに訪れるのが春ならば、間違いではないはずだ。

 球春、ついに来たる。

 待ちわびた真剣勝負の毎日。その始まりが、目の前に迫っている。


 延期されていた開幕が6月19日に決定したことを受け、同2日に練習試合が始まった。計12戦をこなす過程で、A.ラミレス監督の脳裏に刻まれた幾人かの選手がいる。

「まずはバッターから」と指揮官は口を開いた。

「N.ソトは、打率は高くないがホームラン3本で7打点。佐野(佐野恵太)も調子を上げてきたし、J.ロペスは打点をよく稼いでいる。でも、いちばんはT.オースティンだね。安定性が光っていた。現時点においては、完成された姿を見せてくれている」


 新加入ながら、これまでの実戦で長打を連発してきたオースティンに対する監督の期待は絶大と言っていい。

「私がキャリアを通して見てきたなかで、彼ほどの高いスキルの持ち主はそういない。私自身を含めてもね。あれほどのスキルがあれば、日本の野球にもしっかりと対応できると思う。ケガさえなければ、ホームラン王のタイトルを狙えるポテンシャルは間違いなくある。ソトと、チームメイトどうしでタイトルを争うようなことになればすばらしいね。オースティンは新しいスーパースターになれる選手だ」

 一方、ピッチャー陣に関してはどうか。

 監督に強いインパクトを与えたのは、7年目の右腕、平田真吾だった。


「今永(今永昇太)や濱口(濱口遥大)らも安定していたが、ひとり名前を挙げるなら平田だ。すばらしい活躍をしてくれた。途中から一軍に合流し、18人の打者と対戦してヒットを1本しか打たれていない。去年は打ち込まれる試合もあったが、特にメンタルの部分でかなりの成長が見られる。練習試合では登板機会のたびに1イニングをぴしゃりと抑えてくれて、いまやリリーフ陣のレギュラーと言ってもいいポジションにいる。開幕は一軍で迎えることになるだろう」

「今年はより攻撃性が増す」


 今シーズンの起用・采配を語るにあたり、最初にクリアにしておかなければならないのは、外国人枠の運用法についてだ。一軍選手登録の上限が、特例として例年の4人から5人に引き上げられる方向で調整されている。

 ベイスターズの場合、一軍での起用が見込まれる外国人選手は現状6人。ラミレス監督は言う。

「たしかに、増えるとされている外国人枠をどう生かすかは重要だ。今後の状況によっていろいろなパターンが考えられるが、現時点での私のプランとしては、基本的に野手の3人(ロペス、ソト、オースティン)はキープしたい。ピッチャーは先発のM.ピープルズ次第で、彼がローテーションに留まるような結果を出してくれれば、2人のリリーフ(S.パットンとE.エスコバー)を交互に使っていく方針だ。となれば、(左腕の)エスコバーがいない状況もあり得るわけで、だからこそ(先発もできる)石田健大をリリーフとして起用する判断につながったんだ」

 3人の外国人打者に加え、新キャプテンの佐野と確実性の高い宮崎敏郎が中軸を担う。そうして打線を構築していくうえで、監督が最も悩んだのが「1番を誰にするか」だったという。

「『今年は神里(神里和毅)で』と思い、キャンプの時期からチャンスを与えてきたが、彼自身がつかみきれなかった。桑原(桑原将志)、それに乙坂(乙坂智)も非常に状態がよくて悩ましかったが、チャンスをつかんで離さなかったのが梶谷(梶谷隆幸)だった。練習の様子を見ていても、『今年は絶対にやってやる』という彼の気合いはひしひしと伝わってきていた」


 そして、“2020年のベイスターズ”を監督はこう表現する。

「とてもエキサイティングなチームになるよ。去年も筒香(筒香嘉智)がいて攻撃的なチームだったが、今年はより攻撃性が増す。梶谷はホームラン20本、オースティンは30本、佐野は20本。それぐらいは打てる能力を持った選手たちだ。筒香が打っていたホームラン数を差し引いても、十分にプラスになる。さらにソトやロペスが例年以上にやってくれれば、かなりの破壊力を持ったチームになる」

「優勝に必要なものを、我々はすでに持っている」


 一方、およそ2カ月半ぶりの対外試合となった練習試合では、不安材料も見えた。数人の故障者が出たことに加え、クローザーを務める山崎康晃の投球内容がやや不安定だった。

「山崎については、ちょっと体重が増えてシャープさがなくなってしまった印象がある。とはいえ、それが原因で技術やフィジカルに大きな問題が生じているとは思わない。むしろ、彼の場合はキャッチャーが誰かという点が大きいのかもしれない。練習試合では、無失点で抑えたときは嶺井(嶺井博希)がマスクをかぶり、いいコンビネーションを見せていた」

 およそ3カ月遅れの開幕で、レギュラーシーズンは120試合に縮小されるが、それでも6連戦が毎週のように続く過密日程になると見込まれている。

 誰も経験したことがない異例のシーズンに臨む心境を、ラミレス監督はこう語る。

「もちろん、簡単なシーズンにはならないだろう。毎週6試合あって、その中には遠征も含まれる。選手の数字、状態を見極め、ケガの予防も考慮しながら起用方法を考えていかなければならない。今年は“デイ・バイ・デイ ベースボール”がテーマ。バックアップの選手もうまく起用しながら、日々、試合に勝つためにベストな布陣を組んでチャレンジしていきたい」

 ベイスターズの監督に就任して5シーズン目。開幕が決まるまでに社会も球界も激震にさらされたが、頂を目指す指揮官の思いに揺らぎはない。

「我々は3位を経験した。2位も経験した。CSを勝ち抜き、日本シリーズに出場する経験も得た。我々がまだ経験していないのはリーグ優勝だけだ。今年は必ず優勝を果たしたい。そのために必要なものを、我々はすでに持っていると思う」


 6月19日、金曜日の午後6時。

 横浜スタジアムでのカープ戦で、ベイスターズの2020年シーズンは幕を開ける。

 観客は、そこにはいない。ただ、そこにいないだけだ。


「ファンの皆さんがどんなときでも我々をサポートしてくださっていることに、本当に感謝している。残念ながら、当面はスタジアムに来られないが、いつもと変わらぬ声援を送ってくれていると信じ、その期待に応えられるようベストを尽くしたい。待ちに待った開幕。しっかりと準備をし、まずは開幕戦に勝って、その先へと進んでいきたい」

 あと4日。白球にそれぞれの思いを託す戦いの幕が、静かに上がる。

OPENING GAME 2020

写真=横浜DeNAベイスターズ
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