一昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。 報道に張本勲が激怒
今回は『1971年9月20日号』。定価は90円。
前回からもう1ネタ。
優勝決定はまだだが、
巨人、阪急で優勝が決定的になっている中、早くも、いわゆるストーブリーグが始まった。
昔のプロ野球選手は今より我が強く、タニマチもいろいろ。とてもきれいごとだけの世界ではない。
ただ、火種から話を大きくするのは、申し訳ないが、いつもマスコミだった。
当初は最下位にどっぷりつかっていた中日だが、記録を見ると、8月28日に最下位に落ちた後、29日ダブルヘッダーの連勝でいきなり2位になっている。
要はそれだけ団子状態だった、ということだ。
話が前後するが、最下位に落ちる前、26、27日はまだ5位ながら後楽園で首位巨人に連勝したのだが、翌28日のH新聞で「水原中日監督今季で退陣」と出た。
もちろん、水原茂監督は激怒。球団代表も「そんなわけない」と抗議する姿勢を示した。
ただ、水原監督の契約はこの年限り。水原監督の補強や、お友達コーチを集めるために、カネを湯水のように使うやり方にフロントが反発し、同年限りというのは、かなり早い時期から言われていた。
9月1、2日、今度は2位で迎えた中日球場での巨人戦だったが、この報道ばかりではなかろうが、雰囲気が殺気立っていた。
2日の試合では
堀内恒夫が
高木守道の頭部に死球。怒った高木がヘルメットを投げつける騒ぎもあった(以前も一度ぶつけられていた)。
それでも連勝。
球団サイドの建前は別とし、成績不振を理由に契約更新せずが既定路線だった。こうなると、水原監督がAクラスでも退団するのか(させるのか)が注目されていた。
S新聞では東映のことを書いていた。こちらの見出しは「田宮監督、辞任か」である。
東映は5位。これは最下位の西鉄があまりに弱いからでもあり、チームはボロボロだった。
ただ、記事の内容的には
田宮謙次郎監督を責めるというより、中心選手、
張本勲の批判だった。
成績不振は張本のワンマンプレーが原因であり、公式戦終了後、田宮監督は大川毅新オーナーに張本のトレードを申し出、通らなかったら辞める、というものだ。
もちろん、張本は怒る。
「一体この記事はどうなっているんだ。ワシは田宮監督をバックアップすると約束した。男の言葉に二言はない。それに俺は亡きオーナー(大川博)に3度誓った。ワシは東映を強くすること以外考えられませんてね。
だからたとえ、巨人に行けと言われても俺は断る。トレード行きの命令が万一出たとしたら、それはワシがユニフォームを脱ぐときだ。(江藤)慎一のようなみじめなさらしものには絶対なりたくない」
では、また月曜に。
<次回に続く>
写真=BBM