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第1代表で東京ドームへ! 社会人球界に新たな風を吹かせる渡辺俊介監督

 

仮想・公式戦ウイーク


今シーズンから日本製鉄かずさマジックを率いる渡辺俊介監督(元ロッテほか)は、チームに「刺激」を与えており、都市対抗南関東予選における「第1代表」を貪欲に狙う


 日本製鉄かずさマジックの練習拠点である君津球場は、張り詰めた空気が流れていた。7月3日。JR東日本とのオープン戦だが、この日はチームとして、都市対抗の出場権がかかる「代表決定戦」に設定していた。

 今週は「仮想・公式戦ウイーク」だった。6月30日、鷺宮製作所戦を5対4で制し、7月1日の三菱日立パワーシステムズ戦は雨天中止。そして3日のJR東日本戦は3対2で白星を挙げ、一つのミッションを達成した。

 試合後、今シーズンからチームを指揮する渡辺俊介監督(元ロッテほか)は、一塁ベンチ前に選手を集めた。人と人との間隔を開けたソーシャルディスタンスのミーティング。指揮官の声は、スタンドにまで届いてきた。

「ナイスゲーム!! 第1代表で東京ドームに行こう!!」

 4月2日に社会人日本選手権(7月2〜15日)、さらには春先の各JABA大会も相次いで中止となった。この時点で渡辺監督は一度、7月上旬にピークを持ってくることを決めていた。冒頭のように、都市対抗予選を想定した公式戦ウイークに位置づけたのだ。その間、緊急事態宣言により、活動自粛。グループに分け、三密を避けての調整が約2カ月。活動再開(全体練習)は、6月8日だった。

「選手、スタッフからも『本当に(仮想公式戦を)やるんですか?』という声があったのは事実です。ただ、新チームになってから、1度も大会を経験できていないのが事実。選手たちには、やや強引ながらも、あくまでもベストを作れ、と。大会前のような調整をさせました。今のチームの課題を明確にするのと、新人にも『公式戦』の雰囲気を経験させたかった。このタイミングにコンディションを持ってこられた選手もいれば、力を発揮できなかった選手もいた。この時点でのベストメンバーで2試合を戦いましたが、先発で出られなかった選手は相当、悔しかったはず。無理やりでも、やった甲斐がありました」

 JR東日本とのオープン戦で先発したのは、ドラフト候補に挙がる155キロ右腕・山本晃希(九州国際大)。まさに、勝負に出ている。

 攻撃陣は同点の6回裏に四番・吉田開(富士大)がきっちりバントで送ると、18年に侍ジャパンU-23代表でのプレー経験がある宮澤義也(上田西高)の右前タイムリーで勝ち越し。7回表に追いつかれたものの、その裏に相手のミスにより決勝点を挙げた。8回には宮澤が犠打を成功。追加点にはならなかったが、渡辺監督の勝利への執念のさい配を見た。なお、投手陣はエース・山本が4回1失点に抑えると、川名健太郎(法大)、仲尾次オスカル(白鷗大、元広島)とつないで、1点リードの最終回は橘朋晃(日本文理大)が3人で締める、必勝リレーが決まっている。

都市対抗本大会へ強い思い


 前日(2日)には、社会人野球を統括する日本野球連盟が都市対抗野球大会(11月22日開幕)の開催を発表した。「不安はあったが、やるつもりできたので、そこの気持ちは変わらなかった」。渡辺監督は冷静に語ったが、都市対抗本大会への思いは強いものがある。

「第1代表で行けなかったら、日本一は目指せない。昨年、(同じ南関東で優勝した)JFE東日本が良いお手本を見せてくれた。選手たちには全部、勝つことを求めている」

 日本製鉄かずさマジックは8月22日からの一次予選(千葉県)を戦い、10月2日からの二次予選(南関東地区)へと挑むスケジュールが組まれる。昨年は都市対抗、社会人日本選手権の「二大大会」とも出場を逃しており、是が非でも代表切符をつかみたいところ。とはいえ、渡辺監督にとっての予選は「通過点」にすぎない。まずはこの7月に照準を合わせ、第1段階をクリアしたチームに、手応えを得ている。現役時代は世界をも席巻したサブマリンとして活躍。今度は指導者として、チームに刺激を与え、社会人球界に新たな風を吹かせようとしている。

文=岡本朋祐 写真=矢野寿明
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