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週べ60周年記念

足踏みした巨人V7は面白かったのか面白くなかったのか/週べ回顧

 

 一昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。

阪急のスパイ戦略


この年22勝を挙げた阪急・山田久志の熱投



 今回は『1971年10月11日号』。定価は100円。
 
 まだ優勝は決まっていないが、阪急がセの覇者巨人の調査を始めた。
 西本幸雄監督は「優勝が決まってから」と腰が重かったが、海軍情報部にいたという渓間代表が積極的に動いていたらしい。
 大石清スカウトと根来広光コーチがその先兵。広島市民での広島─巨人戦を視察したが、
「ONの前にランナーを出し、どかんと一発を食らい、大量点になるという展開だったが、いまさらこんな試合を見てもね。こちらの知りたいのは、ONが打たないとき、どんな作戦で勝ちにくるかだったんですけどね」
 と根来コーチ。
 試合には大石スカウトがビデオを持ち込み、三塁コーチの牧野茂を中心に撮影していた。おそらくこれをクセ盗みの達人スペンサーを中心に検証していくのだろう。また、広島出身の大石のつてで、広島で王キラーと言われた大羽進に話を聞いたというウワサもあった。

 一方、ナインは東映戦で金田留広が投げるのを熱望していたという。
 理由は金田のカーブが巨人・堀内恒夫に似ていると言われていたからだ。
「金田のカーブの曲がるタイミングと堀内のカーブが似ているので、金田を打てれば掘内を打ち崩せる」
 ということらしい。

 巨人サイドでは、かつての盟友・千葉茂川上哲治にインタビューした記事(コラムの中だが)があったので抜粋していく。

千葉 面白い野球が見られなかったのは残念だったな。哲ちゃんよ、お前さん、今年は面白い野球を見せるって、かっこいいセリフを吐いたもんな。それが…。
川上 面白かったろうが、これくらいよろめいてみせての優勝なんてないじゃないか。強さ弱さの、このつかみどころがないところなんて、面白い巨人やないか、ハハハ。
千葉 冗談じゃないぜ、哲ちゃん、面白い野球というものは、もっと奥深いもんから出てくるもんやぞ。
川上 おい、茂やん、俺のせいばかりにするなよ。よそが弱すぎたことも言わんかな。そうだろ、そのせいだぜ。
千葉 よそが強けりゃ、もっと面白くしてやったというわけか。

 実は73年のV9の後の対談でも同じようなやり取りがあった。あの年は、巨人の足踏みで大混戦となったが、千葉は「そういうシーズンを面白いとは言わない」と否定した。
 ミスや勝ち切れない戦いで自身が足踏みをした混戦で優勝しても、巨人では誇れない。そんなシーズンを面白いとは言えない、ということだった。

 巨人が後半戦はボロボロの戦いだったことは事実。阪急との日本シリーズに水を向けられ、

千葉 しかし正直言って、今年はやられるかもしれんな。
川上 うん、やられるとしたら今年かもしれん。

 というやり取りがあった。川上監督が心配していたのは、福本豊をはじめとする阪急の足だ。捕手・森昌彦の肩が衰えてきていただけに、かなりかき回される可能性があった。
 もう一つは左打者。阪急には山田久志、足立光宏と右打者に強いアンダーハンドが二枚いるだけに、左、特に王の復調は絶対的なポイントとも言われた。

 では、またあした。

<次回に続く>

写真=BBM
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