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週べ60周年記念

村山阪神、屈辱の5位/週べ回顧

 

 一昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。

セの新人王は誰の手に


ミスタータイガース、村山実監督


 今回は『1971年10月18日号』。定価は90円。
 
 9月23日、場所は後楽園球場。
 阪神巨人の胴上げを見の前で見せられた。とぼとぼロッカールームに引き揚げる村山実監督は口をへの字に結んだままだ。
 その横を選手の一人がニヤニヤしながら追い越す。
 その瞬間、村山の手が選手の体をたたき、にらみつけた。言葉はなかったが、
「目の前で、しかも阪神がライバルにしてきた巨人に負けて悔しくないのか」
 ということだろう。
 最終的には5位。いまだ最下位のない阪神で、2リーグ制後は初の屈辱だった。

 誤算はたくさんあった。オープン戦途中での田淵幸一の病気離脱、肝炎のため19試合登板に終わった村山自身、心臓病と歯痛で15勝14敗に終わった江夏豊も痛かった。ほかにも本屋敷錦吾コーチの解任など、得意のドタバタもあった。

 終盤からは若手への切り替えも行ったが、頭角を現したのが、古沢憲司だ。まだ、23歳だが、プロ8年目のベテラン。高校を中退し、プロ初勝利は17歳だった。
 過去2年一軍登板がなかったが、村山の代役として5月に一軍に昇格し、最終的には12勝9敗、防御率はリーグ3位の2.05を残している。

 投手で勝ち星が伸びなかったセでは大洋・平松政次が17勝で最多勝に輝いたが、「セで表彰がない最多勝なんて」と、むしろ打者としての5本塁打に胸を張っていた。盗塁王の表彰が南海・広瀬叔功からというのは有名な話だが、最多勝も、そうだったのか?
 防御率はノーヒットノーランもあった広島藤本和宏で1.71。やや太り気味の体形だったが、
「なにせ、練習が嫌いなものですからね。ランニングも大の苦手。お前、そんなに走らんでよく投げられるな、と言われます」
 とのことだった。

 セの新人王争いでは巨人の4年目、関本四十四が10勝11敗、防御率2.14で、ほぼ当確と見られていたが、割って入りそうなのが、終盤になって打率を上げたヤクルトのちびっこ打者・若松勉。規定打席は難しそうだが、打率3割は行きそう。
 周囲は「相手は巨人のバックがありながら10勝しかしていないし、4年目だ。若松はまじりっけなしの新人だ」と盛り上がっていたが、若松自身は「最後の1打席までベストを尽くします」と淡々と話していた。

 では、またあした。

<次回に続く>

写真=BBM
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