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高校時代は「小林ツインズ」として注目。慶大「投手王国」のメンバー入りへ闘志を燃やす2年生右腕

 

“武”での勝負も求め慶大へ


慶大の2年生右腕・小林綾は長野県屈指の進学校・松本深志高出身。149キロ右腕はこの夏、春季リーグ戦での初登板を目指している


「8.10」に照準を合わせる。

 東京六大学野球連盟は7月10日、春季リーグ戦の日程を発表した。4月、そして5月下旬から再延期となり8月10日の開幕を目指して準備を進めている。昨秋の覇者・慶大は開幕試合で、東大とのカードが組まれている。

 1試合総当たりのリーグ戦で、慶大は7日間で5試合を消化する短期決戦だ。慶大・堀井哲也監督は「投手の出来、打線の組み方がポイント。調子の良い選手を使っていく」と語り、チーム内では激しい競争が繰り広げられている。

 特に高いレベルでしのぎ合っているのが投手陣だ。4年生では木澤尚文(慶應義塾高)、関根智輝(都立城東高)、左腕・佐藤宏樹(大館鳳鳴高)、左腕・長谷部銀次(中京大中京高)がプロ志望を表明。3年生には昨秋のベストナインの右腕・森田晃介(慶應義塾高)、2年生には昨年12月の大学日本代表候補合宿に参加した左腕・増居翔太(彦根東高)に加え、昨秋のリーグ戦でも3試合に登板している左腕・生井惇己(慶應義塾高)と「投手王国」を形成している。

 このメンバー入り枠に食い込もうと必死にアピールしているのは、149キロ右腕・小林綾(2年・松本深志高)だ。7月11日、三菱日立パワーシステムズとのオープン戦(慶大グラウンド)に2番手で登板し、2回無失点に抑えた。2イニングとも先頭打者を四球、失策で出塁を許す難しい展開であったが、後続を抑えて対応力の高さを見せつけている。

 松本深志高時代は「小林ツインズ」として注目を集めた。兄・綾はエース、主将の弟・弦は内野手兼投手として公立進学校をけん引。71年ぶり2回目となる甲子園出場の期待がかかった3年夏は第3シードで臨むも、初戦敗退(対中野立志館高、1対3)を喫した。

「初戦で負けても、決勝でも負けても、甲子園に出場できなければ同じ。悔しかったですが、入試準備に多くの時間を取れました」

 早くから慶大でのプレーを目指していた。

「東京六大学で野球をしたかった。深志と同じように、慶應も考えてやるスタイル。文武両道を追い求めたかったので、“武”においても勝負ができる慶應を志望しました」

郷土と母校の期待を背負って


 兄弟そろって難関のAO入試に挑戦したが、兄のみが合格(弟は1年間の浪人を経て今春、筑波大に入学し、野球を続けている)した。「(AO入試の)志望理由書には夏に負けた理由について記載し、入試に活用できることができ、振り返れば良い経験だったと思います」


 昨年1年間はリーグ戦登板こそなかったが、1、2年生以下でチームを編成する春、秋のフレッシュリーグ(秋はトーナメント)では主戦投手として神宮のマウンドを踏んだ。また、夏場のサマーリーグ(新潟)、秋の閉幕後のオータムリーグ(静岡)を通じて実戦登板を重ねた。また、昨秋は法大とのリーグ戦でベンチ入りし「4年生の動きを間近で見たれたのは財産でした」と、投手陣でプロ入りした楽天津留崎大成の一挙手一投足を見て、勉強してきた。

 迎えた大学2年目は、リーグ戦初登板が目標。新型コロナウイルスの感染拡大を受けた活動自粛期間中も、可能な限りで体を動かしてきた。最速149キロでスライダー、チェンジアップ、カーブをコーナーに集めるのが持ち味だ。

「ベンチ入りが確定している選手とは違って、自分は当落線上の立場です。仮にベンチに入っても、使われるかどうかの状況だと思います。焦りもありますが、自分自身を見失わずに、この夏の春のリーグ戦のマウンドに上がる。その目標を持って取り組んでいきます」

 小林は郷土と、母校の大きな期待を背負っている。松本深志高は1876年創立で、明治、大正、昭和、平成と、旧制松本中学から歴史を重ねてきた県内屈指の伝統校だ。

「チーム内には、長野出身の選手が少ないんです。深志で1学年上の主将だった高山起さんは、1浪をして入学したので同級生。みんながいるときは別にして、1対1のときは『先輩』に対する接し方をしています。深志のOBとして、誇りを持ってプレーしていきたい」

 2年後の「プロ志望」を語るが、まずは「慶應のエースとして、リーグ優勝、日本一の中心的な存在になりたい」と、同級生の増井、生井から刺激を受け、ライバル心を燃やす。小林が神宮で躍動することで、東京六大学でのプレーを夢見る公立高校の球児に、勇気と希望を与える。

文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎
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