巨人の亀井善行が7月9日の阪神戦(甲子園)で通算1000安打を達成した。2点を追う9回二死一、三塁の場面に代打で登場。阪神・
藤川球児のストレートを右前にはじき返したのだが、37歳11カ月での達成は、生え抜きでは球団史上最年長で、全体でも3位の年長記録だった。
そんな亀井が記録達成の瞬間にも手にしていたバットが、元
ロッテの安打製造機・
福浦和也(現ロッテ二軍ヘッド兼打撃コーチ)モデルを改良したものであることをご存じだろうか。
原辰徳監督の信頼を受けて、第2回WBCにも出場(※優勝して世界一に)した2009年から同モデルを愛用しているとのことだから、今季で12シーズン目を迎えていることになる。
「このモデルに行き着くまでは、いろいろ試しましたね。結果が出なかったらバットのせいにしてしまったり……」
MVP1回、ベストナイン3回を受賞し、東都でリーグ10人目の通算100安打を達成するなど、“巧打の外野手”として名を馳せていた中大時代は、
イチロー(元マリナーズほか)モデルを840グラムにしたものを愛用。しかし、「プロでは軽過ぎて球威に負けてしまう」と、ここから迷走期に突入した。
さまざまなモデルや重さを試したが、バットの迷いは打席にも影響を及ぼし、プロ入りの2005年から3年は一、二軍を行ったり来たり。しかし、通算1912安打の
井端弘和(元
中日、巨人)モデルを手にした08年に74安打を放って頭角を現すと、翌09年に運命の出あいが訪れる。
「井端さんのモデルも良かったんですが、持った瞬間にフィーリングがすごく良かったんです」と、ふと手にした福浦モデルの33.5インチ、920グラムがハマった。同年のペナントレースでは五番に座り、142安打、25本塁打、71打点、打率.290。その後、日本一にも貢献したことで、プロ入りから4年にわたるバット探しの旅はゴールを迎えたという。
以降、若干の重さの変更やグリップ部分を削るなどのわずかな仕様変更はあるものの、中距離打者タイプの福浦モデルを愛用し続けている。年齢とともにバットを変えていく必要性を感じているとも話すが、「染みついた感覚もあるので。その感覚が狂うのが怖いから、もうこのバットを手放せません」と亀井。球団生え抜き最年長野手となったが、信頼する相棒を手にする亀井は、まだまだ進化を続けていく。
文=坂本 匠 写真=早浪章弘