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豊島わかなの「都市対抗を夢見る男」

MHPS・上野翔太郎「チームに貢献できる投手に」。甲子園で名を馳せた右腕が社会人で見せる新境地/豊島わかなの「都市対抗を夢見る男」

 

MHPS・上野翔太郎


 どの質問にもじっくりと考えて、丁寧に言葉を選んでから話をする。真面目さが伝わる上野翔太郎からは、誠実な人柄がにじみ出る。所属する三菱日立パワーシステムズ(MHPS)の後藤隆之監督が、「一歩でも引く姿勢が見えたら、相手バッターには見破られる。だから、とにかく強気で。気持ちを前面に押し出して向かっていけ」とアドバイスしたことにもうなずける。

 上野は地元・愛知西シニアでプレー後、強豪・中京大中京高に進学。2015年夏の甲子園では、すべての試合に登板し、5年ぶりの本大会出場となったチームを3回戦へけん引した右腕だ。大会後に開催された第27回WBSC U-18ワールドカップの日本代表にも選ばれ、オコエ瑠偉楽天)、高橋純平ソフトバンク)、森下暢仁広島)ら現在プロで活躍する仲間とともに奮闘。3試合、計18イニングを投げて自責点はゼロと見事なピッチングを見せ、最優秀防御率を手にして準優勝に貢献している。

 今年3月に卒業した駒大では右肩痛に苦しんだ。4年秋の国学院大戦で6回から登板して4回3安打無失点でようやく初勝利。拓大との入れ替え戦では1安打完封と大学ラスト登板で結果を残した。

 輝かしい高校時代、挫折もあった大学時代の球歴に触れると、「今となっては良い思い出です。高校時代の自信も大学野球のレベルの高さに圧倒されてなくなりました。MHPSに入っても、今度はチーム内の実戦練習で社会人バッターのレベルの高さを痛感しています。野球を続けたい気持ちを汲んでくれたチームのためにも、個人として評価されるピッチャーになるのではなく、チームに貢献できるピッチャーになることが目標です」と過去に縛られることなく、新しいステージで真っすぐと前を向く。

 大学4年秋に、社会人野球で活躍する選手からカットボールの習得を勧められた。カットボールが通用するようになると、ストレートの質も上がり、4年春に144〜145キロだった球速は4年秋に149キロまで上がった。新型コロナウイルス感染拡大の影響で活動自粛期間中は、上野が理想の“勝てる投手”と語る東京ガスからオリックス・バファローズ入りした山岡泰輔投手のトレーニング動画を参考にして勉強を重ねた。

 コロナ禍のため今年、社会人野球に残された公式大会は11月の都市対抗野球大会のみとなった。「次の目標は空振りの取れる変化球を身につけることです。もっと投球の幅を広げていけたら。新人だからではなく、1年目からチームの軸として引っ張っていける自信がつくまで練習に臨みたいです」と力強くコメントした上野。社会人野球でもひと花咲かせてくれそうだ。

上野翔太郎(うえの・しょうたろう)
1997年6月30日生まれ。愛知県出身。174センチ80キロ。右投右打。制球力の高さが魅力の本格派右腕。中京大中京高時代にはU-18日本代表にも選出され最優秀防御率を獲得。変化球はカット、カーブ、スプリット、ツーシーム。

豊島わかな(とよしま・わかな)
1986年12月14日生まれ。愛知県出身。2017年から日本野球連盟公式サポーターを務め、社会人野球の魅力を伝えている。

文=豊島わかな 写真提供=MHPS
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