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大谷翔平“二刀流”として正式に認定。異次元の才能に無限に広がる可能性

 

「ショウヘイは最高のアスリート」


エンゼルス・大谷翔平


 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で先延ばしとなっていたメジャー・リーグ(MLB)の2020年シーズンが始まった。新天地での幕開けを迎えた秋山翔吾(レッズ)、筒香嘉智(レイズ)ら日本人選手に注目に集まるが、2シーズンぶりに投打の二刀流として再スタートを切るエンゼルスの大谷翔平の動向も見逃せない。

 待ちに待った特別なシーズンに大谷は気持ちが高ぶっている。久しぶりのマウンドについて、「これまでとは心の持ちようが違う」。調整不足もささやかれたが、公式戦が約4カ月遅れたことが本番までの猶予と働き、開幕先発ローテーションの座を獲得。投打の柱として臨むメジャー3年目の視界は良好だ。

 160キロ超の速球で相手をねじ伏せる本来の姿にはまだほど遠いが、夏季キャンプの実戦練習で50球を投げるなど、経過には手応えを得ている。18年10月に右ヒジの靱帯(じんたい)再建手術(通称トミー・ジョン手術)を受け、昨年は打者に専念。昨年9月は左ヒザの手術を受けた。しかし、これも肩やヒジへの影響を考慮し、二刀流復活の今年に向けての必要な通過点と位置付けている。大谷は「シーズンは短い。ケガがないように最後まで投げ切りたい」と意気込みをにじませている。

 MLBは今年から「2ウェー」ルールを新設。投手と野手の両方でプレーする選手のために投手枠の制限を受けない者を指定できる制度で、エンゼルスは大谷を開幕から登録。メジャーで二刀流選手として正式に認定されることになった。チームも大谷の活躍を楽しみにしている。今年から指揮を執るジョー・マドン監督は、「ショウヘイは最高のアスリート。何も問題はない」と再起に太鼓判。ビリー・エプラーGMは「彼は投手にしても打者にしても、ゴールを明確に設定し、それを遂行する強い意思を持っている」と語る。

 現実は決して甘くない。二刀流復活についても楽観視はできないが、大谷はプレーヤーとしても、一人の人間としての精神的な強靱さも規格外だ。トミー・ジョンを受けた投手は、術後の方が球速は上がるという説もある。可能性は無限に広がっている。

 花巻東高時代に、「絶対に達成する」と公言した球速160キロを達成。妥協を許さずに、自らに課したノルマをクリアするという堅い意思が夢を叶えた。恩師である同校の佐々木洋監督の助言で、160キロを実現するために必要な行動や条件を明記した「目標達成シート」を作成。それを忠実に、着々とゴールに向けて一つひとつ実行してきた。時は過ぎ、野球の最高峰の舞台で試練を迎えた今も、大谷の下には新たなシートがある。

誰も疑わないさらなる飛躍


 日本ハム時代に監督として大谷を間近で見続けていた栗山英樹は、大谷を「異次元の才能の持ち主」と称する。「アスリートとしての能力以上にすごいのが精神力。おとなしそうな顔をしているけど、何かに取り組もうとするときの彼はほかの選手とは違う」と語る。日本では疑問視された二刀流としての結果を出し、少年時代からあこがれていたメジャーに挑戦。ポテンシャルを見せつけながらもケガというアクシデントはあった。だが、さらなる飛躍については、本人はもちろん、身近に触れた誰もがみじんも疑っていない。

 25年前、メジャーは未曾有の危機に陥った。前年からの長期ストライキで1995年は開幕が1カ月遅延。ファン離れがささやかれたシーズンで、パイオニアとして海を渡ってドジャース入りした野茂英雄が13勝6敗を挙げ、チームを7年ぶりの地区優勝に貢献した。豪快なトルネード投法でひたむきに投げる姿が、失望感を抱いていたファンの胸を打ち、「NOMOマニア」と呼ばれる大きなうねりが発生。侍がメジャー人気を取り戻すのに一役買った。

 世界的規模で新型コロナが蔓延する中、暗いムードを吹き飛ばすスーパーヒーローの出現をファンは待っている。165キロの球を投げ、170メートルの飛距離を稼ぐ世界でも類いまれなるタレントが、潜在能力を大いに発揮し、見た者の心を震わせるようなシーズンを演出することができるか。大谷は「うまくいかないことはたくさん出てくると思う。でも、その中でいいプレーができたらいい」。強い思いと覚悟を持ってシーズンに身を投じている。

写真=Getty Images
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