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打率4割に史上最接近! 記録で見るクロマティの1989年

 

引退宣言も……



 31試合を消化した時点で広島堂林翔太が打率.384、34試合を消化した時点でソフトバンク柳田悠岐が.383をマークしているが、打者の究極の夢とも言えるのが打率4割だ。いまだ日本球界では達成者がいない大記録に最接近したのが、1989年の巨人・クロマティだった。

 開幕から、ほぼ4割超の打率を維持し、月間打率でも4月.423、5月.425、8月.413。5月18日の時点で打率.470だった。6月25日、58試合目で一度.396となったが、8月9日に再び超え、最終的には8月20日、96試合目まで4割台を守った(.401)。以後、急失速し、最終的には.378に終わったが、悠々首位打者に輝き、シーズンMVPを手にしている。

 96試合目までの打率4割台は64年の南海・広瀬叔功の89試合を抜く日本記録だが、クロマティはこの時点ですでに規定打席(403)はクリアしていた。すでにV争いでは独走態勢に入っていたこともあり、極端な話、ここで休めば4割を達成できたことになる。

 前年49試合の出場に終わったこともあり、クロマティは開幕前から「チームを優勝させて、この年限りで引退する」と明言。これは宣言したわけではないが、打撃スタイルも一変させた。規定打席到達で打率.300、28本塁打、92打点をマークした87年と打球方向を比較すると(左打者)、レフト方向が25から42、センター方向が45から61、ライト方向が64から56と、強引な長打狙いをしなくなったことが分かる。これにより、ホームランは28から15、打点は92から72に減ったが、もともとメジャーでは中距離打者であり、本来の姿に戻した、とも言えるだろう。

 球団別では大洋に.447、中日に.402とカモにし、球場別でも横浜が.518、ナゴヤが.478となっている。

 一番低い対広島の打率でも.329だが、実は、前年対広島を.261と苦手にしており、この克服が高打率につながった、とも言える。前年、クロマティは大野豊に.143、川口和久北別府学に.167と抑え込まれたが、この年は.208に終わった川口以外は普通に打った。

 積極的な打撃が実り、カウント別打率では0ストライクが.464、1ストライクが.392、2ストライクが.266となっている。

 4割を割った後、10試合の成績が32打数7安打の.219、9月の月間打率が.278と悪化したが、これは気持ちの面で切れてしまったのかもしれない。

写真=BBM
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