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アマ野球の公式戦における「没収試合」の定義を再確認する機会

 

アマチュア野球規則委員会の通達によれば、登録外選手が試合に出場しても、没収試合にはならない(写真は本文とは関係ありません)


 アマチュア野球の公式戦における「没収試合」の定義を再確認する機会となった。

 大阪府高野連主催の独自大会2回戦(7月29日)。八尾高は美原高との7回の攻撃で、メンバー表に記載のなかった選手を代打起用した。「高校野球特別規則」の「大会参加者資格規定に抵触した場合」にはこう記載されている。

「チームまたは選手が大会参加者資格規定に触れたときは、それが分かった時点で相手校に勝利を与える。(中略)大会参加者資格規定に触れたチームが試合中に発見されたときは、ただちに試合を没収して相手校に勝利を与える」

 この「大会参加者資格規定」を、今回の「令和2年大阪府高等学校野球大会」の大会規定に準じるとこうある。

「登録選手は1校30名以内とし、試合当日の出場選手は1校20名以内とする(以下略)」

 試合ごとに「30人枠」の中で20人を選択するという、選手の入れ替えが可能であった。だが、今回は当該選手の記載がなかったわけだ。つまり、登録外選手が出場したため、没収試合が適用された。7回の攻撃の時点で八尾高が9対3でリードしていたが一転、美原高が9対0で勝利する形となった。

 今回は「大会規定」に準じる扱いとなったが、公認野球規則7.03のフォーフィッテッドゲーム(没収試合)の【注】にはこう記載されている。

「アマチュア野球では、本項を適用しない」

 2018年1月、アマチュア野球規則委員会では「没収試合防止に向けて」との文書を、アマチュア5団体(日本野球連盟、日本学生野球協会、全日本大学野球連盟、日本高等学校野球連盟、全日本軟式野球連盟)に通達している。07年度の通達に加え、「単純ミス」についての取り扱いを一部変更したものである。

 野球規則4.07の【注1】には、「没収試合」の取り扱いについて「審判員が取るべき最終手段であり、安易に適用されるものではなく、大会主催者や当該チーム及び担当審判員が十分注意すれば、最悪の事態は避けられるはず」と説明している。そこで、着目したいのが今回のような「単純ミス」である。

 仮に登録外選手が出場した際の「処置3」として、「没収試合」の定義をこう記載している。

「登録外選手が試合に出場、これがプレイ後に判明したときは、大会規定により試合中であれば没収試合とし、試合後であればそのチームの勝利を取り消し、相手チームに勝利を与える」

 しかし、ここで「緩和策」が記載されている。意図的ではない場合の「救済措置」である。

「単純なミスの場合(監督とマネジャーの連絡ミスで、登録外選手が自チームの所属選手である場合など)には適用しない。試合中に判明した場合は、その時点でメンバー表に記載されている選手に交代させ試合を継続する。それ以前のプレイはすべて有効とする。試合後に判明した場合でも、当該選手のプレイはすべて有効とし、処置3は適用されない」

 つまり、アマチュア野球規則委員会の通達に従えば、今回のようなケースでの「没収試合」は成立しないこととなる。全国都道府県連盟が主催する地方大会に代わる独自大会は、多くの高校3年生にとって集大成の場。今夏は例年と異なり、ゲームのたびにメンバー変更が可能な配慮がされている。登録する側も細心の注意を払う必要があるが、誰にでもミスはある。そういった最悪のケースを救うための通達事項でもあった。とにかく、良い形で部活動を締めてほしいと願うばかりである。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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