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最も4割に近づいた1986年のバースの軌跡

 

 開幕からおよそ1カ月半が経過した。ここまで最も注目された選手といえば、広島堂林翔太だろう。今季の堂林は開幕から絶好調で、7月25日の試合まで4割をキープ。現在はやや打率を落としたが、夢の4割打者を目指し頑張ってもらいたいところだ。さて今からさかのぼること35年前、夢の4割に大きく近づいた選手がいた。それが阪神伝説の助っ人、ランディ・バースだ。今回は、NPB史上最も4割に近づいた「1986年のバースの成績」を振り返る。

序盤から打ちまくったバース


阪神・バース


 1983年に来日したバースの1年目は、開幕から15打席連続無安打とまったく打てなかった。しかし、シーズンが進むにつれて調子を上げ、1年目から35本塁打と活躍。2年目の1984年は打率.326と3割を超えたが、故障が原因で27本塁打と前年より本塁打数が低下し、一時解雇の危機に陥った。当時の吉田義男監督が球団に残留を願いでたことでチームに残ることになったバースは、翌1985年は打率.350、54本塁打、134打点で三冠王に輝き、チームのリーグ優勝に大きく貢献した。

 三冠王として迎えた1986年シーズン。この年は従来よりも拡大した新ストライクゾーンが採用された年で、投高打低になることが予想された。バースも大洋との開幕戦で3三振無安打と苦戦するが、三冠王は格が違った。すぐさま新しいストライクゾーンに対応し、4月18日の中日戦では4打数3安打で打率は.364まで上昇。その後は4月、5月と一度も2割台に落ちることはなかった。

ハイペースで安打数を重ねて4割到達するも……


 5月最後の試合で5打数4安打と大暴れし、打率を.346としたバースは、6月に入るとさらに加速。20試合で74打数35安打、月間打率.473と驚異の成績を残し、打率は.387まで上昇した。7月に入ると1日の大洋戦でさっそく4打数3安打と活躍して打率を.393まで上げると、翌2日は5打数4安打。打率はついに4割を突破した。

 ついに大台を突破したバースは、その後8試合で4割をキープ。しかし、オールスター前最後の試合となった7月17日の中日戦で4打数無安打に終わり、打率は.399まで下降。さらにそこから歯車が狂ってしまったのか、バースは7月31日の巨人戦までまったく打てなくなり、打率も.376まで下がってしまう。

8月に入り復調するも4割が遠く……


 8月に入ってスランプを脱したバースは再び打ちまくり、8月12日の巨人戦終了まで25打数16安打を記録。打率は4割に迫る.399まで上昇する。しかし、その後は安定したバッティングを見せるも、再び4割を超えるほどの爆発力はなく、8月終了時点での打率は.391。9月に入ってからはチーム状態が下降する中、バースは孤軍奮闘し、打率.390台をキープし続けた。

 9月終了時点の打率は.394と、10月の試合次第で4割到達の可能性は残されていた。しかし、迎えた10月1日、2日の広島2連戦は5打数2安打(3四球!)で打率は変わらず。4日の巨人戦では4打数1安打で打率は.393に低下してしまう。

 次は7日の大洋戦だったが、ここでまさかの4打数無安打。続く9日の広島戦では4打数2安打と持ち直すも、翌日の広島戦でまたもやノーヒット。終盤での無安打が響き4割到達とはならなかった。それでもシーズン打率はNPB史上最高となる.389。NPB史上初の4割打者こそ誕生しなかったが、いまだに破られない金字塔を打ち立てたのだ。

バースのバッティング


 ちなみに、この年は巨人のウォーレン・クロマティが.363という普通の年なら首位打者になってもおかしくない数字を残しているが、バースの球史に残る活躍のせいでタイトル獲得ならず。.360以上の打率を残して首位打者になれなかったのはクロマティただ一人だ。

 打ちに打ちまくった1986年のバースの成績を振り返ってみたがいかがだっただろうか。あれほどの活躍を見せても4割を超えることはできなかった。「4割」はそれだけ大きな壁なのだ。

 2020年7月31日終了時点での打率ランキングを見ると、セ・リーグは打率.358で広島の堂林翔太がトップ。パ・リーグはソフトバンク柳田悠岐が.379で首位に立っている。堂林は開幕から絶好調で、7月25日まで4割をキープ。柳田は6月は不調だったが、7月に入ると一気に調子を上げ、4割近いところまで数字を上げた。果たして2人は夢の4割打者になれるのか、今後の活躍を期待したい。

文=中田ボンベ@dcp 写真=BBM
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