読売ジャイアンツ
6戦5勝2完封のエース・
菅野智之も候補の1人だが、四番定着3年目を迎え、勝負強さにますます磨きのかかる岡本和真を推したい。今季、
原辰徳監督は、ほぼ毎試合、打順、守備位置に手を加えてきたが、「四番・三塁」の岡本だけは不動。キャンプ中にその原監督から『若大将』の愛称を受け継いだ和製大砲は、36試合終了時点で打率こそ3割を切ってしまったものの(.299)、本塁打はセ・リーグトップの14本で、打点は2位の37点。「僕が打てれば勝てる試合が増えるし、打てなければ難しい試合が増える」と自覚も十分で、首位を快走するチームを力強くけん引している。
東京ヤクルトスワローズ
先発ローテーションを守り続けている
小川泰弘や、リーグトップの38打点を挙げている四番・
村上宗隆など、リーグ2位と下馬評を覆す躍進の立役者たちは多くいるが、何といっても清水昇だろう。リリーフとして、リーグトップの19試合登板に13ホールド。回またぎもこなし、20回1/3を投げわずかに4失点、防御率1.77と、抜群の安定感を見せている。ヤクルトはリーグで唯一先発陣の完投がゼロで、リリーフ陣への負担が大きい。清水の活躍なくして、2位という順位はあり得なかっただろう。ドラフト1位で入団した1年目の昨季は苦しんだが、今季は最優秀中継ぎ投手のタイトルを手にする可能性すらある。これからの活躍にも期待が高まるばかりだ。
横浜DeNAベイスターズ
入団以来、レギュラー定着のない男が、新キャプテンに指名され、「四番・レフト」の座を託された。並みの選手であればプレッシャーに押しつぶされてしまいそうだが、佐野恵太は重圧を跳ね返すどころかパワーに変えた。ここまで全38試合に「四番」で出場。打率.345はリーグ2位。なかなか本塁打が生まれずに「つなぎの四番」と言われてきたが、最近10試合で4本塁打と持ち前のパワーも発揮し始めた。バット以外でも、明るいキャラクターでチームをまとめ上げる姿は、序盤戦のMVPにふさわしい。
阪神タイガース
開幕スタメンから外れたが、7月に入り四番に座った大山悠輔。その後の活躍はすさまじい。一時最下位に落ちながらも、現在勝率5割までチーム状態を戻したのはこの男の存在があったからだ。打率.288はチーム2位ながら、8本塁打、22打点はチームトップ。文句のつけようのない働きでチームをけん引している。今季の打撃には迷いがない。常に狙い球を絞りフルスイング。相手バッテリーも警戒をする中での打撃開眼。序盤戦はこの男の勢いで、チームが盛り返した。ここからは四番の安定感のある打撃で、優勝争いへと導いていくはずだ。
中日ドラゴンズ
投打ともに低調なチーム状態にあって、安定したピッチングを見せている。今年で来日4年目となるライデル・マルティネスだ。8月3日現在まで15試合に登板し、失点はわずかに1。5セーブ5ホールドの防御率0.60は圧巻だ。開幕当初は中継ぎだったが、クローザーの
岡田俊哉が不調に陥ったことで、現在はその大役を任されている。193センチの長身から投げ込むストレートには高さがあり、角度がある。昨年までは走者を背負うとピッチングが乱れる悪癖があったが、それも改善されつつある。「とにかく今は状態がいいからね」と
マルティネス。チーム浮上に背番号97の奮闘は欠かせない。
広島東洋カープ
平たくチームへの貢献度を見れば、打率.343、本塁打11、打点31の
鈴木誠也がやはりNo.1だが、
鈴木誠は「これぐらいやってもらわなければいけない選手」であり、その成績に驚きはない。そういう意味では、カープの序盤戦MVPを選ぶなら、やはり「プロ11年目の覚醒」を見せ、8月3日現在で打率.357でリーグトップの堂林翔太を推したい。悩み続けていた上体の突っ込みがちなフォームが、まるで魔法のように修正され、右方向へのしぶとい打撃も、内角を腕をたたんで前でさばく打撃も自然にこなせているのだからすごい。もちろん1年間、この調子を維持していくのは大変なことだが、何かをつかんだことは確か。これからも楽しみだ。
写真=BBM