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横浜高に真っ向勝負で降板も戸塚高の2年生左腕が浴びた喝采

 

戸塚高の2年生左腕・川崎は横浜高との2回戦(神奈川高野連主催の独自大会)で先発。気迫十分の投球を見せた


 甲子園につながる地方大会中止に代わる神奈川県高野連主催の独自大会も「無観客試合」である。しかも、保護者、NPBスカウトの入場も許可されておらず、スタンドは人数制限された報道陣と控え部員のみ。万全の予防対策下で試合は粛々と進行していた。

「ウォリャ〜!!」

 戸塚高の2年生左腕・川崎大輔は横浜高との2回戦(8月5日)で先発。1球1球、気合を込めて投げ、強力打線に真っ向から挑んだ。

 戸塚高サイドの三塁内野席からは、ストライクが入るたびに拍手が沸き起こる。飛沫感染防止のため、声援を送ることができないからだ。背番号10を着けるサウスポーには、大きな力になった。この日ベンチ入り25人のうち、登録された2年生は2人。出場したのは川崎だけだった。3年生は最後の夏。しかも、昨秋以来の公式戦であり、2年生は覚悟を持って臨んだ。

「マウンドに上がったときに、自分の背負っているものの大きさに気づいた。簡単に上がれる場所ではない。後ろで守ってくれる先輩方、スタンドの部員は、自分が投げやすいように気を使ってくれた」

 4回途中まで投げ、10安打8失点で降板。「(相手打線が)怖い印象はなかったが、心のどこかに逃げている部分があったかもしれない」。試合は6回コールドで敗退(0対10)も、戸塚高はスタンドを含めて誰一人として、最後のアウトまであきらめるメンバーはいなかった。川崎は試合後の取材では時折、涙を見せたが、冬場から課題として取り組んできた内角攻めに、手応えを得たという。カーブ、カットボール、チェンジアップをコーナーに投げ分ける大切さも、あらためて学んだ。この投球を、次に生かさないといけない。言われるまでもなく、川崎は本当の意味で、チームを背負う思いでいる。

「先輩の悔しさも背負っていかないといけない。今日でこのチームは終わり、明日から新チームが始まる。気を使ってもらったので、今度は自分がチームを引っ張っていく立場になります」

 4回途中、川崎がマウンドを降り、三塁ベンチに戻る際には、この試合一番の喝采が起こった。全身全霊の80球。決して、一人では投げ切れなかった。心が込められた3年生、また控え部員からの拍手は、川崎の脳裏に深く刻まれたはずである。

文=岡本朋祐 写真=大賀章好
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