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ライオンズ「チームスタッフ物語」

百万馬力でチームを支える埼玉西武トレーナー・久保田治が描く夢【前編】/ライオンズ「チームスタッフ物語」番外編

 

グラウンドで躍動する選手たちだけではなく、陰で働く存在の力がなければペナントを勝ち抜くことはできない。プライドを持って職務を全うするチームスタッフ。ライオンズを支える各部門のプロフェッショナルを順次、紹介していく連載、今回は番外編として現在、埼玉武蔵ヒートベアーズに派遣されているトレーナーを紹介しよう。

大きく変わった世界観


埼玉西武トレーナー・久保田 治


 埼玉西武からルートインBCリーグ(東地区)の埼玉武蔵ヒートベアーズに派遣されているトレーナーの久保田 治は、NPB同様3カ月遅れとなった未曽有のシーズンの中で、唯一無二の経験を積んでいる最中だ。久保田は2月1日から、社の事業ビジョンの一つ「チームの育成/強化」の一環として1人、ヒートベアーズに帯同。専門である「治療」だけではなく、選手を取り巻くさまざまな業務を行うことによって、よりチームにかかわる業務への理解を深め、さらなるスキルアップを目的に熊谷へ赴いた。ヒートベアーズに身を置いてから早6カ月。そこで久保田の世界観は大きく変わることになる。

「私の専門は選手の治療。選手の状態をマイナスから0に持っていくことが私の仕事でした。でも、ここに来たら私の役目はそれでだけではないです。用具担当やトレーニングコーチ、外国人選手の送迎など、仕事は多岐にわたります」

 久保田の1日は早い。朝6時台に自宅を出発。球団事務所でチーム用のドリンクと氷を調達すると、外国人選手を球場に送るため自宅まで迎えに行くこともあった。朝8時ごろ、ようやく球場に到着すると、そこからはトレーナーの顔。選手たちの状態をこまめにチェックし、練習が始まれば、今度はトレーニングコーチ。選手一人ひとりの状態に目を光らせながら、ウォーミングアップ、アジリティなどをともにこなす。メニューも久保田が考案したものだ。試合が始まれば今度は投手陣に気を配らなくてはならない。中継ぎ投手、そして翌日の先発投手の治療を行う。当然、治療中にヒートベアーズの選手が死球を受けたり、自打球を受けたりすることがあるが、「試合中に何かあれば『久保田さーんって大きな声で叫んでくれ』と選手たちには言っています(笑)」。

 何かが起これば、その声を頼りに久保田はスプレーを持って選手のもとに駆け付ける。試合が終わって一安心する間もなく、待っているのは野手陣のケアだ。休まる時間などひと時もない。常に選手たちに全神経を巡らせながら、時間は驚くほど速く過ぎていく。

「めちゃめちゃしんどいと思うことはありましたが、ヒートベアーズに来て視野が広がった。それはめちゃめちゃ感じますよ」

トレーナー業務だけでなく、選手の練習の手伝いなども行う


 久保田は多岐にわたる業務を一つひとつこなしながら、この半年間、選手を取り巻くさまざまな立場のスタッフの気持ちが理解できたという。

「例えば、治療専門のトレーナーだと、まず選手の体をいい状態に持っていくことを考えます。ただ、選手からすればそれはいいプレーをするまでの過程のひとつ。治療を経て、いかにトレーニングをし、内容のある練習をできるか、ということまで考えなくてはなりませんから」

 まさに縁の下の“何でも屋”。1人4役をこなしながら久保田は今できる精いっぱいをヒートベアーズに注ぎ込んでいるのいだ。後編では、久保田が新しい環境でどのように選手との信頼関係を築いたのか。いま何を思い、チームに帯同しているかについて迫る。

<「後編」に続く>

文=田代裕大(西武ライオンズ) 写真提供=(株)埼玉武蔵ヒートベアーズ
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