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さらなる浮上へ、広島の次のカギは「捕手4人制」の有効活用だ

 

常識を破った興味深い構成


スタメンでないときには代打の切り札的存在となる坂倉。捕手4人を入れている利点を生かし、勝負どころでは積極的に生かしていきたいところだ


 最下位と5位を行き来するなど、シーズン前には予想もできなかった不調に沈んでいる広島。それでも、フランスアの復調で、固まらなかったクローザーにある程度の目途がつき、前回のこのコラムで書いたような急浮上とまではいかないものの、だんだん状況が改善され、3連戦の勝ち越しも増えてきた。課題のリリーフに関しては、あとはセットアップが固まってくれば、というところだが、今回は、攻撃面も含めて、カープがさらに浮上していくための次のカギを考えてみたい。

 それはズバリ、「捕手4人制の活用」ではないだろうか。

 広島は今季、7月下旬に中村奨成を登録した時から、一軍捕手4人制を敷いている。セ・リーグの他のチームは、現状すべて3人制で、一軍に4人入れているのは広島だけだ。今季は一軍登録人数が増えたこともあり、各チームとも捕手を3人入れているが、近年は捕手の登録を2人に絞るチームも少なくない状況だっただけに、4人というのはなかなか常識を破った興味深い構成だと言える。

 広島がこの形を取っているのは、會澤翼坂倉将吾など、スタメンで出ていないときには代打の切り札として使いたい捕手が多いからだろう。捕手は突然の故障に備えて、常に1人はベンチに残しておくのが采配の常識。捕手を代打のカードとして切るためには、最低3人制が必要で、それを一歩進めた4人制ならなお動きやすい、ということになるわけだ。

 しかしながら、実は中村奨が一軍登録されている間、このシステムはさほどうまく機能してはいなかった。中村奨の出番は、自軍の先発投手が早めに交代したときの代打ばかりで、マスクをかぶることは一度もなかったからだ。推測するに、中村奨の一軍昇格は打撃好調を買われてのもので、まだまだ守備のほうでは、勝負のかかる試合終盤にマスクをかぶらせるには不安がある、という判断だったということだろう。

 ただ、4人目の捕手にそういう起用制限があるのでは、試合終盤に向けて他の捕手を残しておかざるを得ない。そのため、會澤や坂倉をベンチに長く残しておきたい、という事情が生まれ、これらの選手を代打のカードとして切るタイミングは試合終盤に限られることになって、浅いイニングのチャンスでは野手からしか代打のカードを切れない、という状況に、今まではなっていたように思う。

 その状況に変化をもたらすのでは? という期待がかかるのが、中村奨との入れ替わりで一軍登録された石原慶幸の存在だ。経験豊富なこのベテランであれば、勝敗のかかる試合終盤にマスクをかぶることに不安はなく、最後の最後まで取っておけ、「第4の捕手」にうってつけの存在だと言える。

 この石原の存在によって、今後は例えばリードを許した展開で打順2巡目や3巡目の下位打線でチャンスが来たとき、ベンチに會澤なり坂倉なりがいれば、浅い回でも代打としてカードを切っての勝負がかけやすくなるはずだ。

石原慶幸の存在


 延長戦が最大でも10回と規定されている今シーズンは、実は12回の可能性があった今までのシーズンに比べて、その試合で代打を出すタイミングがあとどれぐらいあるかは格段に読みやすく、昨年までのように、終盤に向けてベンチメンバーを出し惜しみしながら多めに残して使っていく必要はあまりないはずだ。ここまでの広島の作戦を見ていると、そういう起用はほとんど見られないが、今季の場合、試合中盤であれ、チャンスではしっかりカードを切って勝負をかけるほうが戦い方としては間違いなくいいと思うのだがどうだろうか。

 さらに言えば、石原慶には、今季、まだ勝ち星が挙げられていないK.ジョンソンの「恋女房」という側面もある。もちろん、長い目で見れば、K.ジョンソンにも會澤とのバッテリーで、石原慶と組んでいたときと同様に勝てるようになってもらわなければいけないが、ここまで勝利から遠ざかっている非常事態では、きっかけづくりのために一度、石原慶をスタメンで組ませてみるのも一手だろう。

 4人の捕手をこれからどう使っていくか。これは攻守両面において、カープにとってけっこう大きなポイントになってくるはず。これからの起用法に、注目していきたい。

文=藤本泰祐 写真=BBM
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