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2020甲子園交流試合

ドラフト1候補の明石商・中森俊介が「逸材」と言われる3つの理由/2020甲子園交流試合リポートVol.13

 

新型コロナウイルス感染拡大のため中止となった今年3月のセンバツ出場32校の「救済措置」として甲子園で開催される「2020年甲子園高校野球交流試合」。今夏は地方大会と全国(甲子園)も中止となった。特別な思いを胸に秘めて、あこがれの舞台に立つ球児や関係者たちの姿を追う。

甲子園通算6勝目


明石商高・中森俊介は桐生第一高との甲子園交流試合で2失点完投勝利(3対2)。有終の美を飾った


 なぜ、明石商高・中森俊介が「ドラフト1位候補」にリストアップされるのか、その意味が分かる試合だった。

 桐生第一高(群馬)との交流試合で2失点完投勝利(3対2)。1年夏から昨夏まで3季連続で甲子園のマウンドを踏んでおり、この日の白星で自身通算6勝目となった。

「逸材」と言われる理由は3つある。

 昨夏の履正社高(大阪)との準決勝。初回に4失点した苦い思い出がある。序盤で相手に主導権を握られ、センバツに続き、決勝進出を逃した。

 この日も初回に得点圏のピンチを背負うも、後続を抑え無失点で切り抜けた。2回以降はリズムの良い投球を心がけ、6回まで一人の走者も出さなかった。

「履正社戦は警戒し過ぎて球数が多くなってしまった。自分のボールを信じて、ストライク先行でいきました」

 つまり、同じ過ちはしない。「修正能力」と進化を見せつけたのだ。

 そして、2つ目の武器が「強弱」だ。

 7回に1失点し、1点リードの8回にも二死二、三塁と一打逆転という場面を迎えるが、冷静だった。ギアを上げて、この日最速の150キロで空振り三振を奪っている。スライダー、フォークら変化球の精度も高く、すべての球種で空振りが取れるのが大きい。

 タイミングを外して打たせて取ることができれば、球数を減らしたい場合には、3球勝負もできる。3つ目の売りである「制球力」があるからだ。9回に1失点で1点差とされたが、慌てることなく、後続を抑えている。

高校卒業後の進路は明言せず


 勝てる投手。西武松本航(日体大を経てプロ入り)を育成した明石商高・狭間善徳監督は「粗削りだが、克服できる課題であり、今後が楽しみ」と、中森の素材に目を細める。

 高校卒業後の進路については「完全には決めていない」と語ったが、プロか大学の二者択一だという。「この試合で完封して、自信をつけて『プロ』と言いたいところでしたが、9回2失点。まだまだ実力が足りないのかな、と思う」と、この日の明言は避けている。

 低めのストレートの伸びは、球速以上である。桐生第一・今泉壮介監督も「想像以上に来ていた。変化球の精度も高かった」と称賛。即戦力とは言えないまでも、数年後の先発ローテーションの可能性を秘める。

 狭間監督によれば8月29、30日に甲子園球場で予定される西日本の合同練習会(プロ志望届提出者がNPBスカウトの前でプレーを披露する場)には参加しない意向を示した。今夏で4回目の甲子園。多くの経験を踏んでおり、仮にプロ志望届を提出するにしても、すでにアピールは十分という判断である。最終的な中森の選択に注目が集まる。

文=岡本朋祐 写真=高原由佳
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