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2020甲子園交流試合

なぜ、帯広農は強豪相手にもひるまず戦い勝利できたのか?/2020甲子園交流試合リポートVol.14

 

新型コロナウイルス感染拡大のため中止となった今年3月のセンバツ出場32校の「救済措置」として甲子園で開催される「2020年甲子園高校野球交流試合」。今夏は地方大会と全国(甲子園)も中止となった。特別な思いを胸に秘めて、あこがれの舞台に立つ球児や関係者たちの姿を追う。

勝因の一つは「金農効果」


帯広農高は甲子園交流試合(対健大高崎高


 帯広農高(北海道)が健大高崎高(群馬)との甲子園交流試合で勝利(4対1)した。同校は今年3月のセンバツ21世紀枠で初めて選出された(夏は1982年に出場も初戦敗退)。

 今回はセンバツ大会ではないが、21世紀枠の学校が甲子園で勝利を挙げるのは、2016年の釜石高(岩手)以来。この試合は小豆島高(香川)と21世紀枠同士のカードであったため、一般選考枠の学校に勝利したのは、15年に二松学舎大付高(東京)を下した松山東高(愛媛)以来だった。

 相手の健大高崎高は昨秋の関東大会優勝校で、明治神宮大会準優勝校。帯広農高は強豪相手にも、ひるまない戦いがなぜできたか?

 勝因の一つは「金農効果」だ。

 2018年夏、金足農高(秋田)が甲子園準優勝。大阪桐蔭高との決勝を録画していた、当時1年生の井村塁は衝撃を受けたという。

「最後まで思い切りやる姿勢。攻撃の面でもスクイズの精度の高さなど、参考になりました」

 転機があった。帯広農高は昨年8月、秋田遠征で金足農高と練習試合を組み、刺激を受けた。金農と言えば、のけぞって歌う「全力校歌」があまりにも有名。常日頃からキビキビしており、帯広農高にとっては試合だけでなく、取り組みの一つひとつが勉強になった。

「お手本にしてきましたが、自分たちの代になってからは、自分たちらしさを大事にしてきました」(井村主将)

 つまり、学習したことを、応用させ、アップデートしてきたのだ。

「打ち勝つ野球は、なかなかできませんので、バントや足を絡めての攻撃を目標にしました。あとは試合での全力疾走は、徹底してきた分野です。農業高校でもできるんだ! というところを見せたかった」

 井村は背番号1を着けるエースでもあり、強打の健大高崎高打線を相手に、配球の約4割にしたスローカーブが効果的だった。井村は6回1失点で、7回からは全幅の信頼を置く水上流暢が3イニングを抑えた。攻撃においても、貴重な追加点となる3点目は四番・前田愛都がスクイズを決めている。「スキを突いて(サインが出た)1球で決めたのは大きかった」(井村)。新型コロナウイルスの影響により、十分な準備ができたとは言えなかったが「自分たちはいつも、チャレンジャー精神」と、蓄えてきたものをすべて甲子園で出し切った。

「本当に全員野球で、最後に1勝できてうれしいです」(井村)

真夏の甲子園に、爽やかな風が吹いた。強い者が勝つのではなく、勝った者が強い。高校野球の神髄を、帯広農高があらためて示した。

文=岡本朋祐 写真=毛受亮介
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