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ベースボールゼミナール

メジャーではどのような考えで投げ込みを制限しているのか?/元阪神・藪恵壹に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は投手編。回答者はメジャー・リーグも経験した、元阪神ほかの藪恵壹氏だ。

Q.最近、日本でも高校野球を中心にあまり投げ込みを行わない指導を行うアマチュアのチームが増えているようです。もともとはメジャーから伝わってきた考え、指導方針のように思いますが、実際のところ、メジャーではどのような考えで投げ込みを制限しているのでしょうか。また、トッププロではないレベルのアマチュアの選手が投げ込みを行わないで、一定のレベルにまで到達できるのでしょうか。(佐賀県・48歳)


大船渡高時代の佐々木朗希


 日本のアマチュアの世界では信じられないくらいの球数を試合の中で1人のピッチャーに投げさせている高校もある一方で、昨年、佐々木朗希選手(現ロッテ)が在籍していた大船渡高のように、練習、試合で球数を制限し、故障をさせないで、上のカテゴリーで大きく伸ばしてもらおうという方針のチームも少しずつですが、増えているようです。

 今回の質問は『投げ込み』についてのものですが、そもそも大前提として覚えておいてほしいのは、実戦でバッターと対峙して結果を出すのがピッチャーの役割(プロであれば仕事。アマチュアでもほかのポジションと同様に役割があると考えてください)なのであって、ブルペンでいくらいい球を投げようが、それは自己満足に過ぎないということです。

 また、メジャーの教えで根底にあるのは「肩は消耗品」という考え。肩を使って疲労がたまる中で投げ続けることは、ケガのリスクを増大させる以外の何ものでもないことを分かっているので、彼らは投げ込みをやらない(やらせない)ですし、練習中も、試合でもキッチリと球数をカウントし、制限しています。

 また、数もそうですが、ブルペンでは強度も見ておかないといけないと思います。何パーセントくらいの力で、どれだけ投げるか。100パーセントの力で、100球なんて不可能ですし、8割の力でギリギリ。日本のように球数を重視してブルペン入りすると、最後まで投げ抜くことを考えて力をセーブしがちで、これでは練習の意味がないのではないでしょうか。であれば、球数を抑えながら凝縮して、質の高いボールを投げるほうがよほど意味と効果が期待できると私は思っています。筋肉が疲労するとパフォーマンスが低下するのは明らかになっていることで、その状態で運動を繰り返すことで、じん帯や骨に影響が及ぶことも。まずはこの部分を重視して、練習メニュー考えることが大事だと思います。

「投げ込みを行わないことで一定レベルの選手が生まれるか?」ですが、これも前述のように1球1球の質を高めることで数をこなさなくてもレベルアップは図れると思います。非常に難しいですが、当たり前と思っていたことの中のムダを排除し、合理的に進められる部分は多いと思いますよ。トレーニングも進化していますしね。

●藪恵壹(やぶ・けいいち)
1968年9月28日生まれ。三重県出身。和歌山・新宮高から東京経済大、朝日生命を経て94年ドラフト1位で阪神入団。05年にアスレチックス、08年にジャイアンツでプレー。10年途中に楽天に入団し、同年限りで現役引退。NPB通算成績は279試合、84勝、106敗、0S、2H、1035奪三振、防御率3.58。

『週刊ベースボール』2020年8月10日号(7月29日発売)より

写真=BBM
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