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【MLB】テキサス州アーリントンは打者天国の球場から大きく変わるのか

 

暑いテキサスを本拠地とするレンジャーズに開閉式の球場が出来上がった。「グローブライフ・フィールド」という球場名でそれぞれ名選手にちなんだ構造で作られている


 テキサス州アーリントンのグローブライフ・パークといえば、打者天国で有名だった。灼熱の太陽が照りつけ暑いし、フィールドはカチンコチンで打球が速い。その上風が強く、巻いており、変化球を制球しにくい。ゆえにレンジャーズは強力打線で勝ってきた。

 そこに12億ドルをかけた開閉式の新球場ができた。球場名は「グローブライフ・フィールド」。開閉式の屋根で、34度の猛暑の日でもエアコンのおかげで22度と快適な環境である。しかもフィールドは広め。センターの一番深いところは125メートルだが、410フィートでこれは往年の安打製造機マイケル・ヤングの背番号10番にちなんだ。左翼線は100メートルで329フィートだが、これは殿堂入りの可能性が高いエイドリアン・ベルトレ三塁手の29番にちなんだ。右翼線は326フィートで、1996年、98年、99年にチームを初の地区優勝に導いたジョニー・オーツ監督の26番だ。


 ホームプレートからバックネットまでは12.8メールで42フィート、ジャッキー・ロビンソンの永久欠番42番にちなんでいる。効果は早くも出ている。7月24日、こけら落としの開幕戦はロッキーズ相手に1対0の勝利。ランス・リンが6回2安打無失点と好投したが、ロッキーズの先発ハーマンマーキスも6回途中まで2安打1失点だった。

 両チームともそろってヒットは3本ずつだった。その後も3対2、5対2、4対1、7対4と大量得点が入ることは少なかった。レンジャーズのクリス・ウッドワード監督は「うちの投手から文句は出ないだろう。安っぽいホームランがなくなったからね。もっとも外野は少し深く守るから、ポテンヒットは増えるかも」と話している。

 一方でレンジャーズの打力は低下、チーム打率は.208で24位、ホームラン数は11本で21位、得点数は36点で23位で、チーム成績も3勝8敗とア・リーグ西地区の最下位に低迷している。今後はこの球場に合わせて、投げて守って勝てるチームを作るのだろう。気の毒なのは、4万300席の美しい球場が出来上がったというのに、新型コロナのパンデミックのせいで、お客さんを一切入れられないことだ。

 そこでレンジャーズは欧州サッカーですでに使われていたアイデアを採用。ファンは50ドルを払えば、バックネット裏やダグアウトのそばの席に、自分の写真の入ったカードボードのカットアウトを飾ってもらえる。企画は好評で多くのファンが申し込んでいる。当初、球場のお披露目は3月23日で、レンジャーズがプレーするはずだった。

 それが4カ月も延び、7月になったことで、ここで最初に行われたイベントは実は5月29日の地元の高校の卒業式だった。広いため卒業生やその家族が距離をとってセレモニーに出られるし、設備はすべて真新しいし、レンジャーズの選手から祝福のメッセージも流れる。人気で49校が卒業式に使っている。

 グローブライフ・パークでは95年に野茂英雄がオールスターゲームで先発を果たし、2012年から17年の途中まではダルビッシュ有の本拠地で66試合に先発していることもあり、私たち日本人にもなじみのある球場だった。今後はアメリカンフットボールとサッカーにも使われるそうだ。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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