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継続実施すれば球界全体のレベルアップにつながる「プロ志望高校生合同練習会」

 

「F」と「NPB」の旗がなびく甲子園球場。プロとアマ、野球界が一つの目的意識の下で「プロ志望高校生合同練習会」は行われた


 甲子園球場のスコアボード上に日の丸を挟んで、2本の旗がなびいていた。一塁側は「NPB」の日本野球機構で、三塁側は「F」マーク(フェデレーションの頭文字)の日本高等学校野球連盟。8月29日、西日本会場で始まった「プロ志望高校生合同練習会」は同機構と同連盟による共催行事である。

 コロナ禍にあって、プロ・アマが手を取り合って実現させた企画は、大きな意義があった。なぜ、史上初の合同練習会が開催されたのか? 日本高野連・小倉好正事務局長が語る経緯を聞くと、その事情がよく理解できる。

「新型コロナウイルスの感染状況が拡大する中で、3〜5月は学校の休校措置の中で生徒たちが思うように活動ができなかった。またセンバツ大会の中止、夏の選手権大会の中止を含めて、6月から部活動を再開しても、なかなか思うように準備ができない状況の中、自分の実力を見ていただく機会が異常に少なかったというところで、NPBさんとのご相談の中で今日の日を迎えることになりました。NPB、Jリーグによる新型コロナウイルス対策連絡会議では3月以降、陪席(オブザーバー)という形で関わらせていただき、いろいろと勉強させていただく中で選手権大会、センバツ大会も中止になって、今年は練習試合も見ていただく機会が少ない。生徒の進路保障につながる取り組みができないものか? と話題に上がっていました。NPBの井原さん(敦、事務局長)らとの話し合いの中から出てきて、もちろん(日本高野連の上部団体である)日本学生野球協会の内藤さん(雅之)とも相談しながら計画を進めてきました」

 8月29、30日が西日本会場(甲子園)。9月5、6日が東日本会場(東京ドーム)。球児にとってNPBスカウトへのアピールの場であることはもちろんのこと、レベルの高い選手との練習で、大きな成果を持ち帰るはずだ。

「(日本高野連としての)われわれの手の届かない分野においても手助けをいただいて、野球界という一つの組織の中で、こういう形で関わらせていただいたのは、良い経験になりました。野球界全体で取り組む大切さを、勉強させていただいた。今後もいろいろな形で(プロ側へ)お願いに行くときが出てくるかもしれませんけど、そういう意味でもつながるのではないか、と」

 今年はあくまでも「特例」である。毎年の「恒例化」については、小倉事務局長は慎重に言葉を選んでいる。

「今年に関してはコロナの感染状況によって、生徒たちの実力を発揮する場が非常に限られていた。生徒の就職、進路保障の場につながれば……ということで、特例として認めていましたけど、来年以降については、感染状況も見ながら、関係者とどういう方法が一番良いかを協議していきたい」

 プロ・アマ双方にとって、メリットのほうがはるかに大きい。現実的に、参加者全員がドラフト指名を受けるわけではないが、この2日間の経験は間違いなくプレーヤーとしての幅を広げる時間となる。高校卒業後のプレー続行を希望している球児たちは、大学や社会人、独立リーグ等へ進んでも、今回の合同練習会が肥やしになることは間違いない。仮に春・夏の甲子園大会に出場できなくても、緊張感ある場に立つことがプラス。継続的に実施することが、球界全体のレベルアップにも直結するのである。

文=岡本朋祐 写真=早浪章弘
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