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それぞれの思いを抱えて球児が甲子園で臨んだ「プロ志望高校生合同練習会」

 

芽生えた特別な感情


プロ志望高校生合同練習会の西日本会場初日が8月29日、甲子園球場で開催された。ネット裏では、NPBスカウトらが目を光らせた


 東日本41人。

 西日本77人。

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、今年の高校野球は公式戦中止が相次いだ。高校生のため、プロへのアピールする場を設定したのが「プロ志望高校生合同練習会」である。その参加者内訳が冒頭である。9月5、6日に開催予定の東日本の会場は東京ドーム。一方で、8月29日から2日間、西日本会場は甲子園球場である。

 今回の合同練習会は8月18日までにプロ志望届を提出した部員が対象だ。最終的な同書類の締め切り期限は、ドラフト会議2週間前(10月12日)。つまり、合同練習会に参加しなくても「ドラフト対象」となることは可能であり、すでにアピールが十分と判断した選手は参加をしなくてもいい。

 それにしても、東西で参加者数がアンバランス。日本高野連・小倉好正事務局長は練習初日の8月29日に「感想としては、(西日本は)予定よりも少し多かったかな、と。半々くらいが理想だったが……」と参加者数について言及した。そこで「甲子園開催が影響したのか?」との質問に対しては、言葉を選びながら説明している。

「『もともと甲子園』というのではなくて、ある程度、日程が決まっていた中での予定でございまして、その中で甲子園が空いていた。最初から甲子園ということではなく、NPBさんのほうで調整していただき、決まった。ただ、生徒にとってはあこがれの地でもありますので、結果としては、生徒としては良かったかな……」

 あくまでも結果論の数字。とはいえ春、夏の経験者だけでなく、不出場者にとっても、甲子園の土を踏むと特別な感情が芽生えた。

 1年夏、2年夏に甲子園の土を踏んでいる近江高・土田龍空内野手は「昨夏の甲子園では悔しい思いをした。もう一度、プレーできる。(1年前を)思い出し出しながらやっていました。素晴らしい球場。やれる喜びをかみしめてやった」としみじみと語り、先日の甲子園交流試合でプレーした大阪桐蔭高・西野力矢内野手にしても「最高の球場で、レベルの高い中で、自分も刺激を受けて良かった」と成果を話した。

 また、昨秋の新チーム結成以来、智弁学園高との甲子園交流試合で勝利し、公式戦28連勝で終えた中京大中京高・中山礼都内野手は「同じ場所ですが、試合と練習では違う。(スカウトもいて)独特な雰囲気でした。甲子園でもう1回、やれるということで、楽しく思い切ってやろう! と。緊張よりも、楽しめた」とコメントしている。

初めて甲子園に降り立った選手は……


 一方、合同練習会とはいえ「初甲子園」を満喫した球児の談話を紹介する。

「自分よりも上手な選手ばかりでした。元阪神の今成さん(亮太)にノックを打っていただき、オーラがすごかったです。甲子園でプレーすることは夢だったので、うれしかったです」(京都国際高・釣寿生捕手)

「自分自身、初めて甲子園のグラウンドに足を踏み入れたので、気持ちが高ぶりました」(光泉カトリック高・森本修都投手)

「緊張しましたが、楽しかったです。甲子園でプレーできたのはうれしかったです。フリーバッティングでホームランを打てて、自信につながりました」(おかやま山陽高・漁府輝羽外野手)

「最初は知らない選手と一緒に練習することが少し不安でしたが、甲子園ですごいメンバーと練習できて楽しかったです。自分のセールスポイントはすべて出し切ることができました。無名選手である自分を推薦していただいた先生、応援してくれている屋久島の人々、先輩・後輩への感謝の気持ちをもって、明日も一球一球大事にプレーしていきたいと思います」(屋久島高・黒飛海太捕手)

 もちろん「思い出参加」ではない。全77人が将来をつかむために勝負しに来た。残暑が厳しい中での開催となったが、高校球児には無縁。甲子園に立てば自然とボルテージが高まり、何かを引き出してくれる。「聖地」と呼ばれる偉大さをあらためて感じる1日だった。

文=岡本朋祐 写真=早浪彰弘
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