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トレード物語

トレード物語 秋山幸二の電撃移籍で、大ブレークした「意外な選手」とは

 

「西武のほうが得をしたトレード」


93年オフ、ダイエーから西武にトレードされた橋本、佐々木、村田(左から)


 1993年オフに西武とダイエーが敢行した大型トレードは球界に大きな衝撃を与えた。西武が秋山幸二渡辺智男内山智之、ダイエーは佐々木誠村田勝喜橋本武広と同一リーグのトレードとしては極めて異例の主力選手たちが絡んだ移籍劇だった。

 このトレードの主人公として秋山が語られることが多い。清原和博とともに「AK砲」として西武の黄金時代を牽引。87年に43本塁打、90年に51盗塁でタイトルを獲得するなど攻守走3拍子そろったプレースタイルで球界を代表する選手だった。「西武の顔」とも言える秋山の放出劇にファンからは反発の声も上がった。後年、秋山もトレードを聞いた瞬間に渦巻いた気持ちをこのように明かしている。

「『えっ、なんで?』ですよね。プロ野球にトレードは付きものとはいえ、ちゃんと結果を残してる選手が動かされることはほぼなかったわけですよ。トレードは、一軍半くらいの選手同士が環境を変えるためのものだと思っていたので、自分が動かされるとはまったく思っておらず、ショックでした。頭が真っ白になりました。でも、切り替えは早かったですね。やはり若いころにアメリカのマイナー・リーグのシビアな厳しさを経験していましたから」 

 ただ、村田と佐々木を獲得したことで、「西武のほうが得をしたトレード」という見方も少なくなかった。村田は3年連続2ケタ勝利とダイエーのエースとして活躍。当時まだ24歳と伸びしろ十分だった。そして秋山と同じ外野手で、ダイエーの主力選手として活躍していた佐々木もスケールの大きいプレーが魅力の強打者だった。92年には打率.322、40盗塁で首位打者と盗塁王を獲得。1990年の日米野球終了後には米国のドン・ジマー監督から秋山とともに「MLBに連れて帰りたい選手」として名前を挙げられるほどだった。

 佐々木は西武に移籍初年度の94年に打率.285、20本塁打をマーク。37盗塁で2度目の盗塁王を獲得した。95年オフにFA権を取得した際はメジャーの球団からも獲得のオファーが来たが断った。だが、秋山がダイエーで9年間プレーしたのに対し、佐々木が西武でプレーしたのは5年間だった。持病の腰痛や若返りを図るチーム方針により、98年限りで退団。阪神、米国独立リーグを経て2001年限りで現役引退した。プロ通算打率.277、170本塁打、638打点。1599安打を記録したが、佐々木の全盛期のパフォーマンスを考えると2000安打を達成しても不思議ではなかった。

左の中継ぎとして活躍


98年、胴上げ投手になった橋本


 このトレードで6選手の野球人生は大きく変わった。西武に移籍した村田はエースとして期待されたが、94年が4勝、95年は未勝利に終わって同年オフに中日にトレード移籍。97年限りで現役引退した。意外にも最も長く現役でプレーしたのが、トレードの時は無名だった橋本だった。西武に移籍後、95年から01年まで7年連続50試合以上登板と鉄腕ぶりを発揮。97、98年には68、66試合に登板して連覇に貢献したが、東尾修監督は「優勝の瞬間、この男にマウンドに立っていてほしい」と言い、98年には胴上げ投手になっている。01年には当時のプロ野球記録である439試合連続救援登板を記録。当時、行った週刊ベースボールのインタビューで橋本は以下のように話している。

「ダイエーのときは先発もやっていましたが、ピッチャーがいなかったから。先発で投げろと言われたから投げただけ。もともと先発をしたくてプロに入ったわけではない。社会人のころもすべて中継ぎでした。スカウトの方にも『1回か2回をピシャッと抑えてくれ』と言われてましたからね。やっぱり転機になったのは西武にトレードされたことです。西武にはいいピッチャーが多いし、その中で自分の入り込む余地が左のワンポイントしかなかったですから。パズルのそこが空いていて、スポッとはまっただけ。そして、森繁和コーチに『おまえは左バッターだけを抑えろ、右バッターには打たれてもいいから』と言われたことが大きかった。それから、そのことだけに集中できましたから」

 西武で9年間プレーし、02年途中から阪神、ロッテと移籍して03年限りで現役引退。プロ通算560試合登板で12勝22敗20セーブ、防御率3.71。当時はホールド制度がなかったが、その活躍ぶりはもっと評価されるべきだろう。

写真=BBM

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