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「真っすぐは誰にも負けたくない」直球で押しプロへアピールした帝京大可児・加藤翼

 

“ハプニング”にも動じず


帝京大可児高・加藤は8月30日、プロ志望高校生合同練習会(甲子園)のシート打撃で快投を見せた


 猛暑から一転、突然のゲリラ豪雨だった。プロ志望高校生合同練習会の2日目(8月30日、甲子園球場)は、シート打撃で投手が残り5人(全体でA、B組の合計で32人)となったところで中断となった。

 投手陣は初日、ブルペン投球をしたが室内練習場で行ったため、物理上、NPBスカウトは非公開であった。つまり、投手陣のアピールの場はこのシート打撃がすべてであった。

 選手たちは室内練習場へ移動し、約1時間のインタバルを経て、シート打撃は再開された。「あと1人」で控えていた帝京大可児高の153キロ右腕・加藤翼も、この“ハプニング”と直面する形となった。つまり、甲子園のマウンドを踏み締めることができなかったのだ。

「チームとして甲子園に出場できなかったので、楽しみにしていたので、残念です。ダイヤモンドにすら入れなかったのは寂しい。でも、プロでもやっている球場で練習できたことは良い経験。プロになって、あのマウンドに上がれるようにしたい」

 加藤は逆境に強かった。自身の進路を左右するかもしれないシート打撃に、集中力を切らさなかった。

「すでに肩もできている状態でした。体がかたまり、気持ち的にも……。でも、自分のやることは変わらない。室内へ移動してからストレッチして、キャッチボールも一から作り直しました」

 打者5人に対し2奪三振。先頭打者であった大阪桐蔭高・西野力矢を空振り三振に斬って取り、勢いに乗った。室内のため計測表示はなかったが、150キロ近くは出ていた可能性がある。取材陣は大型ビジョンを見ながらの取材となったが、その画像からもボールのキレ、伸びは抜群であった。

「やっぱり、西野選手との対戦は楽しみにしていたので、最後のストレートも結果的に(高めの)ボール球ですが、その分、スピンが利いていたので振ってくれた。自分の持ち味はスピンの利いた真っすぐ。変化球を織り交ぜながら、それを前面に出していく。理想に近いピッチングができました」

 言うまでもなく、合同練習会はアピールの場。加藤はほぼストレートで押した。その理由からもプロへの意気込みを感じる。

「ここに来る以上、自分の自信のあるボールで抑えようと。想定していたことです」

山下には負けない


 さらに、ハートに火をつけた事情があった。ライバルの存在である。

「小さいころからストレートにこだわってやってきたので……。朝、山下投手のストレートが『高校No.1』という記事を見て、負けられない、と。自分にもプライドがある。そこは真っすぐで押していきました。真っすぐだけは誰にも負けない、と3年間やってきたので、そこは崩したくない」

 この日の午前中、福岡大大濠高・山下舜平大は打者5人から3奪三振、最速150キロと快投を見せた。午後に控えていた加藤は、胸中メラメラしていたのである。

 現状でやるべきことは、すべてやった。厳しいコンディション下で結果を出し、むしろ評価を上げたと言っていい。

「小さいころからの夢であるプロに入って、そこから自分自身の力を上げて、球界を代表するような選手になりたい。明日から夢に向かって頑張っていく」

 夢の甲子園のマウンドは踏めなかった。しかしながら、加藤の投球が甲子園で、強烈なインパクトを残したことは確かである。

文=岡本朋祐 写真=小山真司
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