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【MLB】メジャーで着々と進化、前田が5年目でエリート先発投手の仲間入り

 

先発を希望しツインズに移籍した前田健太。エリートレベルの指標を示しており、まさに水を得た魚のように活躍している


 ツインズの前田健太投手が現地時間8月12日のブリュワーズ戦で6回2/3を投げ5安打2失点で今季3勝目を挙げた。日本人投手8人目の通算50勝に到達した(8月18日はノーヒッターを逃し白星も逃した)。

 プレーオフでも先発を任されたい、その思いからトレード志願し、ツインズに移籍した前田。12日の時点で3勝はリーグ最多タイ、イニング数23.2回は7位タイ、WHIP0.72は7位、被打率。155は8位でリーグのエリート先発投手の仲間入りを果たしている。

 ドジャース時代の前田はチーム方針もあり、早く交代させられてきた。QS(クオリティースタート)率は1年目が44パーセント、2年目20パーセント、3年目25パーセント、4年目35パーセントだった。それがツインズでは4試合中3試合がQSで75パーセント。ショートシーズンで、どのチームも先発投手を早く交代させる中、全幅の信頼を置かれている。

 通算50勝の記念ボール。前田はロッコ・バルデリ監督にサインをねだった。監督は「君のピッチング見るのはすごく楽しみ」とメッセージを入れている。今季前田のピッチングがエリートレベルになったのは左打者を抑えているからだ。

 19年は左打者に被打率.247だったが今季は.154と圧倒している。過去、前田の宝刀スライダーはしばしば左打者に長打を食らったため、昨季は40.9パーセントがチェンジアップ、フォーシームが34.3パーセント、カーブが11.9パーセント、スライダーが11.1パーセント、ツーシームが1.8パーセントという内訳だった。相手打者は真っすぐかチェンジアップという頭で待つことができた。

 だが今年は3試合を終えた時点で36.5パーセントがチェンジアップ、35.9パーセントがスライダー、フォーシームが18パーセント、ツーシームが4.8パーセント、カーブが4.8パーセント。ブリュワーズ戦も左打者にチェンジアップが25球、スライダーが23球、真っすぐが10球、カーブが4球だった。

 軌道や投げ方の工夫で、左打者にとって、両変化球の見分けがつきにくくなった。この日、受けたミッチ・ガーバー捕手は「うちの投手コーチも、ダグアウトから見て、2つの球種の見分けがつかないと言っていた。ケンタはどのカウントでも投げられるからね」と説明。

 前田はメジャー通算50勝について日米のメディアから質問されたが「50勝するためにこっちに来たのではない」ときっぱり。目標はあくまで日米通算200勝だ。ドジャースのアンドリュー・フリードマン編成本部長に先発投手への強いこだわりを説明したときも、200勝がいかに大事な数字であるかを伝えていた。現在147勝で、まだ53勝もあるが、メジャーに来てから年々投手として進化しており、シーズンを通して先発を任されるであろうツインズなら十分達成可能だろう。

「年々、自分の中で成長できている感じがあります。投げているボール自体が良い。レベルの高い打者がいるからこそ、自分も進化しないといけないと考えることができる。そういう意味で、こっちに来て今は一番いい状態ではないかなと思う」

 順番で見ると野茂英雄の123勝、黒田博樹の79勝、田中将大の75勝、ダルビッシュ有の68勝、岩隈久志の63勝、松坂大輔の56勝、大家友和の51勝となる。まだ32歳。田中、ダルビッシュとともに、MLBのエリート投手として、数字をどこまで伸ばしていけるか楽しみだ。 

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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