プロ野球の歴史の中から、日付にこだわってその日に何があったのか紹介していく。今回は2005年9月3日だ。
20試合目の登板で、1636球を投げ込んだ末に、心底待ち望んだプロ初白星だった。楽天・一場靖弘はお立ち台で「長かったです。やっと勝てた。ファンのおかげです」と感慨深げにつぶやいた。この日、行われた
オリックス戦(フルキャスト)だった。「絶対に勝つ」という気迫を込めた152球。10安打の2失点完投で勝利をもぎ取った。
アマ球界屈指の右腕は裏金騒動に揺れたが、誕生したばかりの楽天にドラフト1位でプロ入り。即戦力どころか先発の柱にという過度の期待を背負わされた。開幕一軍入りを逃し、4月の昇格後は7連敗。二軍再降格を経て託された前回先発の
西武戦は
西口文也が9回まで1人の走者も出さない「完全試合」の快投を見せ白星を阻まれた。それでも前年の騒動で「正直、野球はあきらめるしかないと思った」男は「野球をやらせてもらった人に感謝したい」と殊勝な思いで、苦難の日々を乗り越えた。
ちなみに、この1勝で楽天はシーズン100敗を免れ、
田尾安志監督は「楽天の柱として10年以上投げてほしい」と期待を込めた。
写真=BBM