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戸郷翔征は20人目になれるか? 長嶋茂雄、原辰徳、仁志敏久…巨人の新人王史

 


 今季の巨人は菅野智之が圧巻の投球を披露しているが、次いで大きな活躍を見せているのはプロ2年目の戸郷翔征だ。2018年のドラフトでは6位指名と評価こそ高くなかったが、1年目から二軍で好投を続け、シーズン終盤に一軍昇格。CS、日本シリーズでも起用され、今後の飛躍が期待された。迎えた今季、開幕先発ローテーション入りすると、ここまで10試合に登板して7勝2敗、防御率2.50と好投を続けている。この調子を維持できれば新人王も見えてくるだろう。では、戸郷が新人王を獲得した場合、巨人では何人目の受賞になるのだろうか。今回は、巨人の新人王の歴史を振り返ってみた。

巨人初の新人王は伝説の20連勝達成者


 新人王が制定されたのが2リーグ制となった1950年。この年のセ・リーグは、松竹ロビンスの大島信雄が20勝4敗の成績で初代新人王に輝いた。巨人の選手が初めて受賞したのは翌1951年。入団3年目の松田清が23勝3敗、防御率2.01の成績を挙げ、見事に新人王に選ばれている。この年の松田は5月23日の広島戦からシーズン終了まで19連勝を果たし(翌年に20連勝まで伸ばしている)、セ・リーグでは現在も破られていない最多連勝記録を樹立した。

 2人目は1954年で、後に指導者としてもプロ野球界に大きな影響を与える広岡達朗が受賞している。当時入団1年目だった広岡は、巧打・好守を武器に活躍し、当時3年連続ベストナインの平井三郎から正遊撃手のポジションを奪取。最終的に打率.314、15本塁打、67打点の成績を残し、新人王とベストナインを受賞した。1957年には藤田元司が新人王を獲得。プロ8年と短い選手生活の中で119勝を挙げ、巨人監督時代にはチームを2度の日本一に導いている。

巨人・長嶋茂雄


 1958年のセ・リーグは、後にプロ野球最大のスーパースターへと成長する長嶋茂雄が受賞。1年目ながら打率.305、29本塁打、92打点、37盗塁と圧巻の成績だった。この年は9月19日の広島戦で本塁打を放った際、ベースを踏み忘れたことで取り消しになっており、もしこの取り消しがなければ、史上初となる1年目でのトリプルスリーを達成できた可能性もあった。

史上まれな4年目での受賞者


 1960年代に入ると、堀本律雄(1960年)、城之内邦雄(1962年)、堀内恒夫(1966年)、高田繁(1968年)と4人の新人王が巨人から生まれた。

 堀本は当時に故障者の多かった巨人投手陣を支える活躍を見せ、最終的に29勝を記録。新人王のほかに最多勝、沢村賞も同時に受賞している。1962年の城之内は、前半戦は肩の故障が原因で調子が上がらなかったが、後半戦だけで16勝と荒稼ぎし、最終的に24勝に到達。エース格に成長した。

 1966年の堀内は、スタルヒンの11連勝を超えるセ・リーグ記録の開幕13連勝を達成するなど目覚ましい活躍を見せた。その年の最終成績は16勝2敗、防御率1.39で、最優秀防御率、最高勝率、沢村賞も獲得。18年間にわたり、エースとしてチームを支え続けた。1968年の高田は、巨人の野手としては長嶋以来の新人王受賞。1年目から「一番・センター」で起用され、120試合に出場した。規定打席には届かなかったが、最終的に打率.301、9本塁打、30打点の活躍で新人王に選ばれている。


 1971年には関本四十四が新人王を受賞した。1968年ドラフト10位で入団した関本は、入団以降主に打撃投手を務めることになり、一軍での登板は3年間一度もなかった。しかし、4年目の1971年に一軍に昇格すると、先発で起用されて10勝11敗、防御率2.14の成績を残し、見事に新人王を獲得。プロ入り4年目での受賞は1950年に新人王が制定されて以降初で、ほかには1998年の西武小関竜也しかいない非常にまれな記録だ。

現在の巨人監督も新人王を受賞


 1978年は、角三男(現・角盈男)が受賞。1976年のドラフトで指名された角は、その時点ではプロで通用する自信がないとして、プロ入りを1年遅らせて入団。迎えたプロ1年目の1978年は、いきなり60試合に登板して5勝7敗7セーブと好投した。

 1981年には、現在巨人の監督を務める原辰徳が、打率.268、22本塁打、67打点で新人王に選ばれている。長嶋、王が去った巨人を担う存在として大きく注目されたが、そのプレッシャーに負けることなく見事な活躍を見せた。

 1983年はプロ入り2年目の槙原寛己が新人王に選ばれた。4月16日の阪神戦で一軍初マウンドを踏んだ槙原だが、いきなり完封試合を達成。それも延長10回を投げ切ってのものだったため、大きな注目を集めた。その後も年間を通して先発ローテーションを守り、12勝9敗1セーブ、防御率3.67と新人王にふさわしい成績を収めてる。

育成からの新人王の誕生


巨人・仁志敏久


 これまでコンスタントに新人王を輩出してきた巨人だが、1983年以降はなかなか巨人から新人王は出ず。桑田真澄松井秀喜など、後に巨人の柱に成長する選手も、新人王争いに参加できるほどの成績が残せていないのだ。

 槙原以来13年ぶりの新人王受賞となったのが1996年の仁志敏久だ。シーズン途中から三塁に定着すると、打率.270、7本塁打、24打点で新人王を獲得。その後、チームに欠かせない存在に成長した。1999年は上原浩治が15連勝を記録するなど目覚ましい活躍を挙げ、最終的に20勝4敗、防御率2.09で投手主要タイトルを独占。沢村賞にも選ばれている。

 2000年代に入ってからは、2003年に現在の二軍投手コーチ・木佐貫洋が受賞している。この年の木佐貫は10勝7敗、防御率3.34の成績を挙げ、新人ながら25セーブを記録した広島の永川勝浩、25本塁打の村田修一を抑えての価値ある受賞だった。

巨人・山口鉄也


 2008年には育成出身選手では初の新人王が誕生した。2006年に育成ドラフト1位で入団した山口鉄也は、2007年に支配下に昇格すると、主に中継ぎで活躍。新人王資格を残した状態で迎えた2008年も、セットアッパーとして67試合に登板し、11勝2敗2セーブ23ホールド、防御率も2.32と圧巻の成績を残して新人王に選出された。

 翌2009年松本哲也が新人王に輝き、2年連続で育成出身選手の受賞となった。2007年育成ドラフト3位で入団した松本は、同年に支配下登録されるも、ケガの影響などもあり一軍に昇格できなかった。しかし、2009年はオープン戦で活躍したことで開幕一軍入りし、堅実な守備で外野のレギュラーを奪取。最終的に129試合に出場して打率.293と活躍し、新人王とともにゴールデン・グラブ賞も獲得した。

 2010年は現在広島で活躍する長野久義、2011年はロッテに移籍した澤村拓一が新人王に選ばれている。2度のドラフト指名拒否を経て巨人に入った長野は、1年目からレギュラーで出場。一時不調で二軍落ちしたものの、打率.288、19本塁打、52打点と活躍。2011年の澤村は1年目から開幕一軍を勝ち取り、先発ローテーションの一角として29試合に登板。11勝11敗、防御率2.03の成績を残し、さらには江夏豊以来となる新人での200イニングにも到達したことも評価され、新人王に選ばれた。

 1950年から現在までに、巨人からは19人の新人王が誕生している。果たして戸郷は20人目の新人王となれるのか。今後の活躍に期待したい。

文=中田ボンベ@dcp 写真=BBM
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