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ベースボールゼミナール

“ワンポイント禁止”でどのような影響がある?/元阪神・藪恵壹に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は投手編。回答者はメジャー・リーグも経験した、元阪神ほかの藪恵壹氏だ。

Q.MLBでは“ワンポイント禁止”のルールが採用され、来季以降には日本でも採用される可能性が高まっています。チーム、選手にはどのような影響があるでしょうか。(群馬県・22歳))



 国際大会もこのルールに則って戦うことになるわけですから、NPBでも採用せざるを得ないのではないでしょうか。

 リリーフも経験した私からすれば、さまざまな役割のピッチャーがいて、それぞれがプロフェッショナルな仕事に徹することで1試合を完成させるわけですから、そのような専門職をなくすことは残念な気持ちがあることは確かです。

 ただ、ブルペンに待機しているピッチャー(陣)からすれば、たとえばイニングの先頭で行けば、右左に関係なく、「3人を抑えて帰る」とはっきりしているわけですから、頭の整理はつきやすいですよね。今までならば先頭の右2人を抑えて、最後は誰か左にスイッチという作戦はなくなるわけですから。イニング途中で1つのアウトを取るために、例えば左のサイドスローのワンポイントを挟む、という継投はできなくなりますが、ルール上、イニングが終わればピッチャー交代は許されるわけですから、一死から左バッター2人を抑えるため、二死から左バッター1人を抑えるためのワンポイント的な起用は可能で、完全に“ワンポイント”で生きてきたリリーバーの職場が失われることはないのでしょう。

 計算どおり、2人抑えて帰ってこれなければ、3人目の右バッターと対峙することになりますが、そこはプロ。対左に特化したピッチャーも、右バッターに対する対策をしっかりと立てて、何か武器になるようなボールを身に着ければ、結果的に、球界全体のレベルアップにつながっていくのではないでしょうか。そこで対応が利かないのであれば、球界を去るのみ。プロは厳しいですからね。

 今季からMLBではこのルールが採用されていますが、今のところ大きな混乱はないように感じます(コロナ禍でそれどころではないというのもありますが)。いずれにしても、ブルペンにいるピッチャーたちをベンチがどう使うか、または“ワンポイント”で生きてきたリリーバーたちがどのような進化を見せるか。ファンの皆さんも注目してみていただけると面白いと思いますよ。

 ただ、繰り返すようですが、対左バッター、対右バッターに特化した“専門職”のピッチャーがマウンドに立って、そこで繰り広げられる対戦を見る機会が減ってしまうのは、やはり残念ですね。

●藪恵壹(やぶ・けいいち)
1968年9月28日生まれ。三重県出身。和歌山・新宮高から東京経済大、朝日生命を経て94年ドラフト1位で阪神入団。05年にアスレチックス、08年にジャイアンツでプレー。10年途中に楽天に入団し、同年限りで現役引退。NPB通算成績は279試合、84勝、106敗、0S、2H、1035奪三振、防御率3.58。

『週刊ベースボール』2020年9月7日号(8月26日発売)より

写真=BBM
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