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大久保新監督の下、ENEOSが5年ぶりの都市対抗出場を決めた理由は?

 

原動力は「彼らの思い」


西関東第一代表で、5年ぶりの都市対抗出場を決めたENEOS。復帰1年目の大久保秀昭監督は横浜スタジアムを舞った


 ENEOSが都市対抗西関東予選で、東芝と三菱パワーを破り、5年ぶり50回目の本戦出場を決めた。

 西関東予選は3チームによる総当たりのリーグ戦で、上位2チームが本戦への出場権を手にできる。9月14日は東芝が三菱パワーを下し、15日はENEOSが東芝を下している。

 ENEOSは16日の三菱パワー戦を落とすと、3チームが1勝1敗で並び、23日からのトーナメントで仕切り直しという流れだった。両チーム相譲らず、3対3のまま延長に入った。大会規定により、12回で決着がつかない場合は、翌日に再試合の可能性もあった。

 ENEOSは最後の攻撃となった12回表に2点を勝ち越し、4時間2分に及ぶ息詰まる熱戦を制した(5対3)。ENEOS・大久保秀昭監督は昨年12月、慶大での任期を残しながら名門再建のため、古巣に6年ぶりに復帰した。

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、社会人野球の大会は相次いで中止。唯一、残されたのが都市対抗だった。公式戦の場を一度も経験することなく、事実上、1つの黒星が致命的となる都市対抗西関東予選に臨んだ。

 4年連続で代表権を逸していたENEOSは昨年まで、同予選で8連敗中だった。つまり、東芝と三菱パワーに勝てなかった。今回なぜ、結果を残せたのか? 大久保監督は復活出場の原動力を「彼らの思い」と語った。

「3年間、(前監督の)山岡(剛)監督が苦労してきたのを見てきた。彼は最も信頼してきた選手。(前々任の監督の)私としても、責任を感じていた。地道に築いてきた3年間がつながった。私はスパイス的なもの。やればできる、と。火付け役ではないですが、良い方向へ導いていけるかを考えていました」

 この試合で決勝打を放ったのは入社3年目の小豆澤誠(上武大)。また、11回裏のピンチで本塁への好返球でサヨナラを封じたのは川端将広(筑波大)。山岡前監督が採用に関わってきた同期入社組が大仕事をやってのけた。「3年目の君たちが頑張れば、山岡にも報いることになるだろう」。大久保監督の叱咤激励が、若手選手に伝わったのだ。

浸透していた泥臭さ


 仮に5年連続で出場を逃せば、部存続の危機に直面する可能性があるほど、会社から相当のプレッシャーもあったという。公式戦がない分、オープン戦から勝ちにこだわってやってきた。三菱パワー戦は1点リードの8回裏に追い付かれる。そのまま逃げ切りたかった思惑が外れ、ペースは相手に傾けかけた。しかし、ベンチに焦りはない。むしろ「こういう試合を勝つためにやってきた。相手も必死なわけだから、そうなる(同点)よね」と、前向きな声があちこちで出ていたという。

 12回表に勝ち越しタイムリーを浴びた三菱パワーの右腕・大野亨輔(専大)は言う。

「自分たちの技術が足りなかったのもありますが、チームが一つになりきれていなかったかも……。ENEOSには泥臭さが、浸透していた。4年逃している執念を感じました」

 明らかに昨年までとは異なる「チーム力」を相手に印象づけていた。ENEOSは西関東第1代表。ひとまず、最低限の目標を遂げたが、常に日本一を目指す集団である。都市対抗最多11度の優勝を誇る名門は、ようやくスタートラインに立ったに過ぎない。今年のスローガンは「ドラマティックチェンジ〜V字回復 忘己利他〜」。11月22日に開幕する東京ドーム本戦でも、劇的な感動を与える戦いが期待される。

文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎
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