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特別な2020年秋――野球部員だけでなく応援団(部)も燃え尽きる

 

1年ぶりの応援活動を実施


東京六大学秋季リーグ戦は9月19日に開幕。8月開催の春のシーズンでは行われなかった応援活動が外野席の一部で再開された


 神宮名物が戻ってきた。

 東京六大学秋季リーグ戦が9月19日に開幕。新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、再延期を経て開催された8月の春季リーグ戦(1試総当たり)では、応援団(部)の入場が認められなかった。

 2試合総当たりのポイント制(各校10試合、勝利1ポイント、引き分け0.5ポイント)となった今秋は、収容人数が3000人から5000人へと拡大。左翼席と右翼席に指定エリアを設置し、1年ぶりの応援活動が実施された。

 東京六大学応援団連盟ではガイドラインを作成。ソーシャルディスタンス(前後に1席ずつ、左右に3席ずつを空ける)を確保し、密接、密集を避け、マスクを着用して活動することが徹底された。

 応援団(部)はリーダー、チアリーディング、吹奏楽の3部門で編成される。3パートとも原則、マスクを着用して応援するが、メーンとなるリーダー1人のみは着脱を行った(前方には団員・部員を配置しない)。

 吹奏楽部についても、スポーツ現場における感染予防対策の経験が豊富な専門家(医学部のある東大、慶大)からの助言を踏まえ、飛沫が飛ぶことを十分に注意。譜面・譜面台・打楽器のスティック等は共有物ではなく、すべて個人管理とした。

 言うまでもなく、東京六大学野球と東京六大学応援団連盟は「運命共同体」である。選手宣誓を行った今春の優勝校の主将・中村迅(4年・常総学院高)も、そうした歴史的背景の事情を十分に理解していた。

「今季は応援の力も加わり、より一層、盛り上がることと思います。選手と応援が一体となり、医療従事者をはじめ、支えてくれる方々のために、全力プレーで、日本を活気づけることを誓います」

 通常の応援態勢であれば、ベンチにいるメンバーは、応援席を背にする形になる。一方で、相手校の応援席はほぼ正面であり、よく耳に届く。ところが、今回は外野席であり、ベンチにも熱烈的な声援が十分に届いてきた。

「やはり、神宮の応援は風物詩」


 応援団(部)の部員にとっても、神宮で活動することは特別だ。今春は実現できなかっただけに、感慨深いものがあった。開幕戦(東大−法大1回戦)で勝利した法大応援団の4年生は試合後に語った。3部が合同での練習は2週間前の1度。ほぼぶっつけ本番だった。

「コロナ以降、(応援)活動はこの神宮が初めてです。春は野球部がリーグ優勝。真っ黒になってプレーしているのに、自分たちはモヤシっ子みたいに、部屋の中で見ているだけ。自分たちも負けていられない。火がつきました。自粛期間中、できなかった分を取り返す。さまざまな方が動いていただき、ご支援のおかげで応援ができている。頭が下がる思いです」(山岸祥造・リーダー部責任者)

「踊りの最中は発声禁止なので、ダンスに集中して、他の部分で声を出していました。マスクで笑顔が見えない? 隠れていても、表情は分かります。どんなときも、笑顔は全員が心がけていることです」(津吹千花・チアリーディング部・連盟常任委員)

「耐え忍んできました……。演奏させていただける。楽器に久しぶりに触れることができ、感無量でした。世間の目は厳しくて……。試行錯誤でオンライン上で楽譜を確認してきました。いつもは内野からですが、今回は外野からなので、音を合わせて、集中して演奏しました」(須永祥平・吹奏楽部・連盟常任委員)

 東京六大学野球連盟・内藤雅之事務局長はリーグ戦開幕日を終え、こう語った。

「春は(全国の)25連盟が中止となる中で、安全と安心を優先してきました。東京六大学野球にとって、一緒に発展してきたのが応援団(部)。4年生に表現する場を与えたいと、500席を用意し、100人までの入場としました。遠くからでも太鼓や演奏を聞くと、六大学野球らしくなってきたな、と。野球部同様に感染予防対策を十分にやり、2カ月、事故のないようにしていきたい。一つのモデルケースとして、東京六大学が全国の先頭に立って示していく。やれることをやっていきます」

 開会式で井上崇道理事長(明大野球部部長)は言った。「(新型コロナウイルスは)決してマイナスだけではない。この経験は生涯に残る、貴重な一コマになる」。明大1回戦で開幕白星を飾った早大・小宮山悟監督は「やはり、神宮の応援は風物詩。馴染みの曲が耳に入ると、気持ちが入る」としみじみと語った。特別な2020年秋。野球部員だけでなく、6校の応援団(部)も各校10試合を燃え尽きる。

文=岡本朋祐 写真=菅原淳
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