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大学野球リポート

多くの観客が神宮に――。ファンも選手も「戦国・東都」を堪能

 

東都大学秋季リーグ戦の開幕日(9月22日)、神宮球場には2974人の観衆が詰めかけた


 やはり、野球の神髄を楽しむには、生観戦である。

 東都大学秋季リーグ戦は9月22日に開幕。神宮球場には今シーズン、同連盟が定めた収容人数3000人に迫る2974人の観衆が詰めかけた。シルバーウィークの最終日。一部加盟全6校が登場(今秋はすべて1日3試合)し、天候に恵まれたことも影響したが、何よりも球音を待ち焦がれていた。

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、春のリーグ戦は戦後初となる75年ぶりの中止。歴史が途絶え、すべての関係者が「秋は何としても行いたい」と開催へ尽力した。2勝先勝の勝ち点制による入れ替え戦という「通常開催」は断念。各校2戦総当たりの10試合勝率制で実施することになった。仮にチームに感染者が出て「出場辞退→最下位」という不利益を出さない配慮により、入れ替え戦は中止(二部優勝校は自動昇格)。東都の「醍醐味」に固執するより、試合開催を優先したのだ。

 高校野球では多くの3年生が、夏の地方大会と全国大会(甲子園)中止を受けて涙を流したが、大学4年生も同様。春中止で、学生ラストシーズンへの思いは相当である。

 東都大学リーグは、連盟関係者によれば熱心なオールドファンが神宮へ足を運ぶ傾向にあるという。今秋、感染リスクを回避するため、ご年配方の足が遠のくのではないか? と予想したそうだが、多くの観衆がスタンドを埋めた。開門こそ前倒しにしなかったが、朝の出足は通常よりも早かった。首を長くして、プレーボールを楽しみにしていたのである。

 スタンドを見渡すとこの日、オールドファンに加えて目立ったのが、部員の家族の姿だった。選手たちは思う存分の全力プレーで「感謝」を表現。もちろん、試合である以上は勝負に徹するが、1年ぶりの「戦国東都」には、さわやかな空気が流れていた。2974人の観衆は「戦国・東都」を堪能して、家路についた。

 春と秋、当たり前のように行われていたリーグ戦も、新型コロナウイルスの感染拡大と向き合い、当たり前ではない現実を知った。学生たちは白球を追えるありがたみを感じ、球場、審判員をはじめとした試合運営者、相手校へ対するリスペクト。特別な思いを胸にして各校10試合、神宮の杜に立つ。

文=岡本朋祐 写真=井田新輔
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