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社会人野球リポート

極限の重圧と向き合う都市対抗二次予選。崖っぷちから勝ち上がった日本生命

 

「部存続の危機」に直面するケースも


日本生命は9月24日、近畿二次予選の第5代表決定戦(対ニチダイ)を制し、2年連続61回目の都市対抗出場を決めた(写真は3回に先制点を挙げ、盛り上がる日本生命ベンチ)


 社会人野球は今、最も熱い季節を迎えている。

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、各大会が中止。唯一、残ったのが都市対抗野球大会である。東京ドームの出場切符をかけた二次予選は、各地区で熱戦が展開されている。

 今年は東京五輪が開催される予定だったため、都市対抗は当初から例年の夏開催ではなく、11月22日開幕の日程が組み込まれていた(毎年、秋開催の社会人日本選手権とスケジュールが入れ替わり、同選手権は7月2日開幕で予定されていたが、4月2日に中止決定)。

 この都市対抗二次予選こそが、社会人野球の醍醐味と言える。ある意味、本戦ではノビノビと戦うことができるが、予選は極限のプレッシャーと向き合う。「出場」と「予選敗退」は、大げさな話ではなく、天国と地獄ほどの差。ある企業チームの関係者によれば、本戦出場を逃せば、1年の取り組みが「全否定」されるほど、会社からはシビアな目で見られるという。「部存続の危機」に直面するケースさえある。事実上、一つの負けも許されない予選の一発勝負には、ドラマが詰まっている。

 1球で試合が大きく動く。プライドが激突するアマチュア野球最高峰の舞台は高校生、大学生にとっては、お手本のようなシーンの連続。技術だけでなく、学ぶべきものは多い。

生きた心地がしない24日間


 さて、近畿二次予選は出場14チームに対して代表枠は「5」。9月1日に開幕し、最終日は24日に迎えた。この最終戦となった第5代表決定戦でラストのイスを手にしたのは、日本生命だった。大会最多61回目の出場の名門は苦しんで、苦しみ抜いた末の東京切符。極端な話、生きた心地がしない24日間だった。

 日本生命は大会初日、第1代表決定トーナメント1回戦で、カナフレックスに延長12回タイブレークで敗退(10対11)した。この黒星が悪夢の始まりであった。

 同予選は「敗者復活方式」。初戦敗退だと、過酷な展開を強いられる。日本生命はこの段階で第2代表、第3代表決定トーナメントには入れず、第4代表トーナメントへ回った。1敗も許されない状況から3試合(2、3、4回戦)を勝ち上がり、第5代表決定トーナメント進出の権利を得た。同5回戦では因縁のカナフレックスを下し、第4代表決定戦へ駒を進めたが、日本新薬に惜敗。残るはニチダイとの第5代表決定戦だった。勝っても負けてもラストゲーム。日本生命はこの修羅場をくぐり抜け、2年連続61回目の出場を決めた。

 日本生命は3回に1点先制も、5回に追いつかれるが、7回に一挙5点を挙げて、そのまま6対1で逃げ切った。敗者復活戦は、14日間で6試合。悪夢の初戦敗退からチームを立て直した。日本生命はもともと力があるチームである。まさしく崖っ縁から這い上がった分、手にした財産は大きい。つまり、もう、失うものはない。良い意味で開き直って臨める本戦は、不気味な存在となりそうだ。

文=岡本朋祐 写真=石井愛子
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