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戸郷も続くか…高卒2年目に大ブレークを果たした巨人のスター投手とは

 

 今シーズンの巨人はエース・菅野智之の活躍が目立つが、菅野の次にチームに貢献している投手が高卒2年目の戸郷翔征だ。昨季終盤から大事な場面で起用されるなどチームから大きな期待がかけられていたが、今季は12試合に登板して7勝4敗。その期待に応える活躍を見せている。この調子を維持すれば、新人王も夢ではない。さて、同じように高卒2年目で大ブレークを果たした巨人の大投手が槙原寛己だ。今回は、巨人の偉大なレジェンド投手の足跡を紹介する。

プロ12球団が注目した剛速球投手


快速球にスライダー、フォークを武器に巨人を支えた槙原


 大府高時代の槙原は、140キロ台中盤の剛速球を投げる投手として甲子園でも活躍。当時の愛知県下の高校には、名古屋電気高の工藤公康、愛知高の浜田一夫と逸材がおり、槙原はこの2人とともに「愛知三羽烏」と呼ばれ、スカウトから高い評価を受けていた。

 ドラフトでも注目の存在だった槙原だが、早々に「ファンだった巨人か地元の中日以外に指名された場合は社会人野球に進む」と明言。半ば逆指名のような形となり、巨人が単独1位指名に成功した。

 ちなみに1981年のドラフトで、巨人は1巡目で槙原、3巡目で吉村禎章、5巡目で村田真一を獲得しており、後の彼らの成績を考えると「大当たり」の年だったといえる。

2年目で12勝と活躍して新人王を受賞


 ドラフト1位指名で巨人に入団した槙原だが、ルーキーイヤーの1982年はプロで投げるための体づくりに専念。二軍では試合に登板したが、結局一軍では起用されなかった。しかしシーズン終了後の非公式試合に出場した際に、そのピッチングが藤田元司監督に評価されたことで、翌シーズンは一軍に抜擢されることになった。

 槙原は春季キャンプ、オープン戦と好投。一軍抜擢のチャンスを見事にモノにし、開幕先発ローテーションのポジションをつかんだ。初登板は4月16日の阪神戦。10回を投げて無失点と、一軍初登板・初先発とは思えないピッチングを披露し、初勝利を記録。最初の試合で10回を投げ切り、勝利を収めたことは大きな自信になったという。

 その後、槙原は先発の一角として起用され、最終的に31試合に登板。12勝9敗1セーブ、防御率3.67と見事な成績を残し、巨人では12人目(当時)となるセ・リーグ新人王に選出された。

不振から立ち直り大投手へと成長


1994年には完全試合を達成。以後、今日まで同記録は成し遂げられていない


 2年目の活躍を受けて一躍先発の柱となった槙原だが、速球メーンのため強打者相手に打ち込まれる試合が多く、また与四球が多いことから、1984年、1985年と2年連続で負け越してしまう。特に1985年は、阪神相手にバックスクリーン三連発(正確には掛布の打球はバックスクリーン横に入っているが)をお見舞いされる、打球を捕りに行く際に転んで股関節を骨折するなど、厳しいシーズンを送ることとなる。

 しかし、翌1986年は、速球メーンから、後に自身の代名詞となるスライダー中心のピッチングに変更。これが功を奏し、1986年5月に骨折からの復活を果たすと、新人王を獲得した1983年以来の勝ち越しを記録する。翌1987年は10勝と復調した槙原は、ここから3年連続で2ケタ勝利を達成。1990年代に入ると、斎藤雅樹桑田真澄とともに巨人を支えた。

 特にファンにとって印象深い投球が、1994年5月18日の広島戦での「完全試合」だ。中2日で先発となった槙原は、102球を投げ、プロ野球史上15度目となる完全試合を達成。見事なピッチングを披露した槙原に長嶋茂雄監督が抱きつき、軽く持ち上げるシーンを覚えている人も多いだろう。ちなみにこの試合は巨人にとって球団創設以来通算7000試合目。大事な節目の日での大記録達成となった。

 先発三本柱としてチームをけん引した槙原だが、1990年代後半になるとケガの影響もあって調子を落とし、登板機会が激減。結局肩のケガによる不調から脱することができず、2001年に現役を引退した。通算成績は159勝128敗56セーブ。勝利数は、桑田の173勝に次いで巨人歴代8位。記録にも記憶にも残る大投手だった。

 高卒2年目ながら今季ブレークを果たし、新人王争いを繰り広げている戸郷。同じく高卒2年目で才能を開花させた槙原と同じように、巨人史に残る大投手に成長できるのか。今後のプレーに目が離せない。

文=中田ボンベ@dcp 写真=BBM
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