週刊ベースボールONLINE

HOT TOPIC

東京六大学野球連盟加盟6大学が参加。スポーツギフティングサービス『Unlim』とは?/Daiki’sウォッチ

 

 東京六大学野球2020秋季リーグ戦が9月21日に開幕しました。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、この秋も特別規則(10試合勝率制など)を採用した中での開催となりますが、とにかく開幕を迎えられてホッとしました。8週にわたる激戦を、六大学OBとして楽しみつつ、選手たちを応援したいと思います。

 さて、その東京六大学野球連盟と加盟6大学野球部が、スポーツギフティングサービス『Unlim(アンリム)』(https://unlim.team/)に参加したことをご存じでしょうか。「アスリート・チームへの新しい応援のカタチをコンセプトとしたスポーツギフティングサービス」とのことですが、果たしてどのようなサービスなのか。今回、『Unlim』を運営する株式会社ミクシィの武本泰伸さん(スポーツギフティング部部長)に、お話を聞くことができました。

いつでも応援できる仕組み



田中 まず、『Unlim』というシステムについて、教えてください。スポーツギフティングサービスとのことですが、クラウドファンディングや、いわゆる投げ銭システム(※一般的にはオンライン上のライブ配信サービスなどで視聴者から感謝や応援の気持ちを込めて、お金やお金に換金することができるアイテムなどを配信者へ送るシステムのこと)とは異なるのでしょうか。

武本 シンプルに説明しますと、ファンが選手を金銭的に応援できる仕組みです。ご質問のようにクラウドファンディングや投げ銭と言われているものと何が違うのか? と聞かれることも多いのですが、クラウドファンディングは応援を募集している期間が設けられていたり、投げ銭も同様に“この試合”に設定されていることが多いのが実情です。

田中 つまり、従来あるシステムだと、決められたタイミングでの(金銭的な)応援となってしまう。

武本 そうです。もちろん、それぞれにニーズがあって良いと思うのですが、「応援をしたい」という想いは365日、さまざまなタイミングで、場所で、状況に応じて生まれるものだと思います。

田中 ただ、それがいつなのかは、誰も分からない。

武本 はい。ファン目線で考えたときに、応援できる窓口を常に置いておいてもらったほうが、好きなタイミングで応援できるのではないか、と。いつでも応援できる仕組み、これが『Unlim』の最大の特徴だと思っています。

田中 なるほど。システムを構築していく上で、難しかった部分はどういったところでしょうか。

武本 「お金をいただく以上は、物的な対価が必要だ」という大前提の考え方が根強くあります。それは正直に申し上げますと、われわれサービスを作っている側も同じです。ただ、「すごく良いプレーを見せてもらった」こと自体がファンによっては対価になりえると考え、選手たちにぜひ頑張ってほしいというときに、例えば「100円を渡したい」という想いや気持ちに関して、物的な対価がなくても成立するだろう、という仮説を立てました。これを最後まで守って設計するところが、一番苦労しました。

聞き手を務めた田中大貴氏(左)と株式会社ミクシィの武本泰伸氏


田中 個人のアスリート・チームを対象に今年2月、『unlim』はスタートしていますが、反響はいかがですか。

武本 現状、150アカウント(※アスリート・チームともに1アカウントとして計算。この中に東京六大学所属の6大学も含む)の申し込みをいただいている状況です。ギフティングをしていただいた総数、延べ人数は約2000〜3000人(※すべてのアカウントトータル)。コロナ禍の影響もあり、延べ人数に関しては予想を下回りましたが、平均単価、つまり1応援あたり3700円は逆に、想定よりも高い金額でした。

田中 人数、金額の想定との誤差はどのような理由で生じていると考えていますか。

武本 人数に関して、リピート率が課題に挙げられます。先ほどお話しした延べ人数の内訳としても、「1度」という方が圧倒的です。その理由を考察すると、1度、応援したことで、満足していらっしゃるのではないか、と。そこに対してわれわれは継続して応援したいと考えられるようなモチベーションを提供することが重要だと考えています。

田中 コロナ過でイベントが減り、アスリートがメディア等で取り上げられる機会も減っていますから、ファンの方がアスリートの情報に触れる機会も当然、減ることになります。

武本 そうですね。われわれサイドから情報を発信し、「このような応援する機会がありますが、どうですか?」と、ファンの皆さんに積極的に働きかけていくことも必要になってくると思います。

田中 『unlim』に参加するアスリート・チームの方の中には、半信半疑でスタートされる方もいるかと思いますが、ギフティングを受けての反応はいかがでしたか。

武本 ギフティングの結果に関しては定期的にアスリート・チームの方に報告させていただくわけですが、多くの場合、結果、数字を見て、「本当に、自分を応援していただけているんだ」と実感される方が多いですね。

田中 『unlim』のスポーツギフティングサービスは、プロ、アマチュア問わず参加が可能なようですが、今後もここに線引きをすることはありませんか。

武本 これからもプロ、アマ問わずに参加いただきたいと考えています。アマチュア側にはアマチュア側でアスリート・チームを応援したいファンの方、その理由があります。プロに関しても同様で、例えば私はあるプロ野球チームのファンなのですが、優勝したとなれば「よくやった」と心の底から思いますし、移籍してきた選手が好投を見せたとしたら、窓口があったならば、きっとギフティングをすると思います。ほかにも、長いリハビリを経て、ケガから復帰したプロアスリートがいて、そんな選手を応援することも『unlim』でならば可能です。このように、プロ、アマ、競技の規模にかかわらず、応援の動機、機会はさまざまにありますからね。

田中 なるほど。アスリート・チームを対象としたサービスですが、個人と団体と、違いは生じているのでしょうか。また、現在の比率は。

武本 われわれのサービスでは、現状9割以上が個人(アスリート)のアカウントで、チーム、団体は1割未満です。個人のアスリートとチーム、団体で異なるのは、スタートの段階でサービスを投げ銭という形で試しに採用している点でしょうか。つまり、試合単位でお金を集める。この取り組みのほうが分かりやすいことは確かです。ただし、われわれのサービスまで来ていただくには、もう一歩、理解を深める必要があると思います。

球界全体にとても大きな影響も


田中 プロはある程度、資金源を確保していますが、資金に恵まれていない、アマチュア、学生においては画期的なシステムだと思います。特に学生などはOB会や、学校側からの資金援助によって活動するのが従来の形。今回、東京六大学野球連盟と加盟6大学野球部が『unlim』に参加しましたが、その経緯を教えてください。歴史と、伝統のある連盟とどのように向き合ったのでしょうか。

武本 まだスタートしたばかりで実績のないサービスというところもあり、「こういうものです」「このように活用していただけます」とユーザーの方(※ファンの方)、アスリートの方、チームの方に分かりやすく伝えていくために、すでに熱量のある競技、団体にご活用いただいたほうが良いだろうなと考えました。そこで候補に挙がったのが東京六大学野球です。野球という影響力の大きい競技で、学生野球とはいえ歴史、伝統があり、とても分かりやすい事例になるのではないか、ということで私たちのほうからお声掛けさせていただきました。

田中 反応はいかがでしたか。

武本 お声掛けしたのがコロナのタイミングということもありまして、さまざまなことが不透明になっている中で、各大学に対して幅広い年齢層のファンの想いをダイレクトに届けられることを、ご提案させていただきました。われわれもハードルの高さを覚悟していましたが、柔軟にご検討いただけました。

田中 学校、体育会、OB会の説得は大変だったのではないか、と想像します。

武本 連盟様にお声掛けさせていただいた後、各大学の責任者の方にも同意をいただいて、ご採用いただいた流れです。とんとん拍子ですんなりと、というわけではなかったと思いますが、先方の気にされている課題に対して、一つひとつご提案することで、進んでいったという形です。

田中 時代、タイミングもあるのかもしれませんね。連盟側から何か要望はありませんでしたか。

武本 当初から連盟様がとても気にされていたのが、平等の精神です。例えば、サービスを紹介するときの写真の使い方1つとってもそうですね。また、学生野球憲章に関しても気にされていました。選手に対してお金が発生するのはやめましょうと。この点に関しては、あくまでもチームに対してであることを説明し、ご納得いただきました。

田中 実際のサービスの流れとしては、東京六大学野球連盟にギフティングをして、6大学に平等に分配される形でしょうか。

武本 連盟様に間を取り持ってもらいまして、応援に応じた額を各野球部にお渡しいただく形のスキームとさせていただいています。

田中 使い方などの決まりはあるのでしょうか。

武本 ほかのアスリート・チームと同じように、基本的には使用用途に関してこちらからの縛りはございません。

田中 何に使ってもOKだと。

武本 OKです。みなさん、潤沢に資金があるわけではないと聞きます。練習環境の改善に充てる、遠征費に充てる、コロナの影響で発生する費用に充てる。柔軟に活用いただければと思います。

現在、東京六大学は熱戦を展開中だ(写真は早大・早川隆久


田中 『unlim』が東京六大学と組んだことで、生まれるシナジーとは、どのようなことだと考えていますか。

武本 最終的には、どれだけの応援が集まったのか、実績に比例する部分があることは大前提として、大学という枠組みでは、野球以外の競技、団体への影響が考えられます。野球という枠組みでは、単純に同じ大学のカテゴリーのほかの団体を始め、球界全体にとても大きな影響があることを期待しています。

田中 今年の春季リーグ戦は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、真夏の8月10日から18日の9日間、1試合総当たりの方式と、イレギュラーな形で開催されました。この“春”から東京六大学野球へのギフティングはスタートしましたが、ファンの皆さんからの反応はいかがでしたか。

武本 われわれのサービスでは例えば100円という金額と一緒に、メッセージを送ることができます。1週間と少しという短い期間でのギフティングでしたから、もともと大きな金額も想定できなかったのですが、非常に熱のあるメッセージをいただきました。中には卒業生にしか分からないような、母校への想いなども書かれていて、秋季リーグ戦ではお送りいただいたメッセージがより分かるような形に改修をしています。

田中 このサービスをどのようにして訴求していくか、がポイントのように感じます。

武本 おっしゃるとおりです。アスリートに対してはわれわれが頑張ってお声掛けしていけばいいのですが、ユーザー、ファンの皆さんに対して「こんなシステム、サービスがありますよ」と訴求する部分がとても大変です。ある一定数のアスリート・チームの応援ができる窓口となったタイミングで、ユーザーさんに対して積極的に働きかけることになると思います。

田中 なるほど。全国にはほかにも大学野球のリーグが存在しています。今後、その他のリーグへの展開も考えていますか。

武本 もちろんです。大学野球はトーナメントだったり、「4年生の最後のシーズン」と言ったような、期間限定の強みもあることも確かで、この部分を訴求して進めていくと、より良いのかなと考えています。冒頭で対価は必要なくてもこのサービスを構築できる、とご説明しましたけれども、とはいえギフティングが終わった後に、学生の皆さんが「ありがとうございました」と一礼する動画が出てくると、リピートにつながる部分はあると思います。そういった工夫はまだまだできると思います。

田中 よく分かりました。ありがとうございました。

 今回は東京六大学野球との取り組みを中心にお話を聞きましたが、野球界では独立リーグにも展開を進めていて、現在はBCリーグの栃木ゴールデンブレーブスが参加をしています。今後はNPB球団が参加する可能性も探っていくとか。ファンの皆さんがある種の個人スポンサーとなってアスリート・チームを応援する、非常に分かりやすいギフティングのシステムは、時代の流れもあり、今後、さらに大きくなって広がっていくのではないでしょうか。

▼下記バナーより六大学の野球部を応援することができます。







スポーツギフティングサービス『Unlim(アンリム)』

写真=BBM
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング