一昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。 試合短縮はできるか
今回は『1972年2月7日号』。定価は90円。
かつての週べ名物は、豪華座談会(対談)だが、話があちこちに飛んでいることが多く、コンパクトにまとめづらいので避けていた。しかし、このメンツで、しかも表紙にデカデカと出ているとなれば、仕方あるまい。少しだけ抜粋し、紹介する。
出席者は、
水原茂(解説者)、
三原脩(
ヤクルト監督)、川上哲治(巨人監督)。大きなテーマは陰りを見せ始めた観客動員に対する施策「試合時間の短縮」だった。
直前の監督会議では、打席をみだりに外さない、投球間隔が20秒を超えたらボールなどの規定が決まっていた。
川上監督は現役時代、一度、打席に入ったら絶対に外さず、しかもじっと構えていたことで有名だった。
司会は、この川上監督なら、新ルールに賛同と思い、話を振ったが違うらしい。
「あそこに選手の虚々実々の間がある。1回外すということに大きな意味があるということをマスコミが教育してくれたら、観客も、ああ、あそこで何を考えているんだろうという形になると思うんですよ」
川上監督はまた、記録員から「何もないのに1球1球サインを見る必要がないでしょう」と言われたことにも「1球1球クセをつけてサインを見る習慣をつけようとしているんだ。不必要とは何事か」と怒っていた。
川上監督は、この「短縮が正義」は、テレビ局が放送時間内に終わらせたい、新聞は締め切り前に終わらせたい、という、たぶんにマスコミの勝手ではないか、と思っていたようだ。
三原監督も監督会議で10点差以上の試合は7回で打ち切りを提案していたが、これは時間というより、10点差もついていたらファンも興味がなくなっているし、力ある投手をつぎ込むのはチームとしては避けたい、また、負け覚悟で力のない投手を出してもファンに失礼だし、選手も打ちのめされてかわいそうだからということだった。
こんなやり取りもあった。
水原「去年のヤクルト戦を見た限りでは、対ジャイアンツ戦の内容は、一昨年のヤクルトと全然違っている」
川上「あれは三原さんの魔術でうまくいっているだけで、三原さんがやめられたら、元のもくあみにある(笑)」
水原「前半、ジャイアンツに走らせんことだが、走らせたあと共食いみたいなことばっかりやっていたらあかん」
川上「いや、ありがたいことでございます(笑)」
過去、この3人の座談会はあったが(ほかにもいた
大勢のものや、2人が一緒で1人は別の人とかもあった)、たいてい年下の川上はからかわれ役だったが、今回は違う。水原氏、三原監督とも川上監督に一目を置いている雰囲気があった。
では、また月曜日に。よい週末を。
<次回に続く>
写真=BBM