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1991年、82敗のダメ虎に灯ったかすかな光明、阪神投手陣がつくった“快記録”とは

 

秋風吹く甲子園で5日間だけの奇跡


1989年、ドラフト1位で阪神に入団した中込。91年は13試合に登板して1勝4敗、防御率4.29だった


 とにかく弱い。優勝争いなどまったく関係なしのシーズンだった。1991年、首位に26ゲーム差で、ぶっちぎりの2年連続最下位に沈んだ阪神がシーズン終盤、一風変わった“怪記録”をつくっていた。

 残り18試合で早くも2年連続最下位確定が目前。秋風がビュービューと吹きまくっていた甲子園球場に、ある“奇跡”が起こった。まずは9月22日の横浜大洋戦。お立ち台で涙を流した阪神先発・中込伸の完投勝利からだ。

「すごくうれしいです。これまでなかなか勝てず、スカウトの方や田舎の監督、コーチの皆さんにも、ご迷惑をお掛けしました……」

 背番号は99と大きいが、89年のドラフト1位。右ヒジ手術もあり、これがプロ初勝利だ。小社もカメラマンを派遣していなかった消化試合から、史上例を見ない“快記録”がスタートした。

 翌23日の横浜大洋戦で、今度は新人ドラ1の湯舟敏郎が先発での2試合連続完封勝利。さらに24日からのヤクルト3連戦の初戦で、88年のドラ1、野田浩司が3失点完投勝利、続く25日には87年のドラ1、猪俣隆が1失点完投勝利。これで4連続完投勝利だ。阪神にとって、77年4月7日の6連続完投勝利以来14年ぶりとなる。

 26日、今度は90年のドラ1、葛西稔が1失点完投勝利。まさに前代未聞、ドラフト1位だけの5連続完投勝利を達成した。

 阪神は、これでこの年初の5連勝、3連戦初の3タテ、2年目の中村勝広監督にとって、就任以来初の月間勝ち越しでもあった。葛西は「ツバメキラー」と言われ、ヤクルト戦5勝目、うち4完投だった。この間、和田豊八木裕オマリーら打線も好調。遅まきながら“勝ちパターン”もできてきた。

 しかし28日、甲子園を離れた途端、“魔法”が解けた。中日に8対9と逆転負け。以後閉幕まで2勝11敗とダメ虎へと完全に逆戻り。ただし、我慢しながら5人を軸につくった先発投手陣は翌年も機能。リーグトップの防御率2.90を残し、2位躍進の原動力となった。

写真=BBM
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