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DeNA“つかみどころのない男”がチームトップ8勝目

 

8勝目を飾り、3本塁打のオースティンとヒーローインタビューに立った大貫(写真右)。現時点でベイスターズのエースと呼んでも差し支えないだろう


 内野フライに打ち取られ、ベンチに引き上げる中日の打者が首をかしげていた。“つかみどころのない”とは、まさにこういうことを言うのだろう。10月4日の中日戦(横浜)に先発した大貫晋一は、7回1/3を3安打1失点の好投で8勝目を飾った。

 チームは直近の6試合中5試合で初回に失点。さらにすべての試合で先制点を許していただけに、立ち上がりの重要性は理解していた。「いい形で立ち上がることができた」と初回を三者凡退に斬って取ると、それに応えるように初回からベイスターズ打線が力強く大貫を援護した。

 社会人時代からツーシームとスプリットのコンビネーションを投球の基本としてきた。緩急をつけるよりも意識するのは「打者に真っすぐとツーシーム、スプリットの判別をさせないこと」。持ち球を“擬態化”することで打たせて取るスタイルを確立させ、プロへの活路を開いた。ルーキーイヤーの昨季は6勝をマーク。2年目はカットボールが加わったことで相手打者の困惑の色は増し、それが今季の飛躍につながっている。9月5日の広島戦(マツダ広島)ではプロ初完投も果たした。

 シーズン中も研究を重ねる。前回の広島戦(9月27日、マツダ広島)からはチェンジアップを解禁することで緩急を使い始め、打者からすれば狙い球が絞りづらい非常にやっかいな存在となりつつある。バッテリーを組む戸柱恭孝の指示なのだろう、4日の試合では、大貫が持ち球の中で「あまりよくない」と表現するカーブとスライダーも効果的に使った。150キロを超える速球や、魔球のような変化球もない。それでも多彩な球種を巧みに使い分け、いまやチームの勝ち頭だ。

 大貫の活躍でDeNAは連敗を4で止め、3位に再浮上。残り試合は少ないが、今週からの首位巨人、2位阪神との6連戦で借金を返済し、一つでも上の順位を目指したいところだ。万全とは言えない先発陣を“つかみどころのない男”が懸命にけん引する。

文=滝川和臣 写真=川口洋邦
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