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川口和久WEBコラム

ピッチャーに必要なのは球速だけじゃない。若手は石川雅規に学ぶことが多いはずだ/川口和久WEBコラム

 

130キロ台でも攻めている


ようやく1勝を挙げた石川


 ドラフト会議が近付く。
 上位投手のデータを見ると、大学生だけじゃなく高校生でも、ほとんど身長は180センチ台、球速のマックスは150キロ台、それも中盤以降が多い。
 ただ、よく思うけど「1試合でアドレナリンが出たとき、たまたま1、2球、150キロが出るときがある」のと「先発でコンスタントに150キロが投げられる」は、同じマックス150キロでも、まったく別。
 アマで150キロ右腕と言われて注目して見ていたら、プロでは140キロ台前半しか出ないこともよくあるしね。

 でも、もし150キロ出なきゃプロでは通用しない、身長が低ければ通用しないと思っている高校生、大学生の選手、さらに言えばプロの若手投手がいたら、ぜひ、この男のピッチングを見てほしい。
 身長167センチ、球速はほとんど130キロ台のヤクルト石川雅規だ。しかも、若手時代は150キロが出たけど、今は出ないわけではない。ずっと決して速い球がない中で、現役最多の172勝を挙げた鉄腕だ。
 プロの世界では1年だけとか、何年かに1回は活躍する投手もいる。でも、石川の2ケタ勝利は11回。投球回は昨年までの18年中、1年を除けばすべて110回以上だ。
 これは好不調にかかわらず、味方打線の援護のあるなしにかかわらず、しっかり責任を果たし、首脳陣の信頼を得てきた証しだ。

 40歳の今季は苦しんだ。開幕投手でスタートしながら1勝もできず、10試合目の9月30日、DeNA戦(横浜)でようやく勝利投手になった。勝てなかった試合も紙一重のピッチングが何試合かあったが、くさらず、自分のピッチングを続ける姿はさすがだった。

 石川のピッチングには、プロで勝つためのヒントがたくさんあると思う。
 まずはフォーム。球種や球速だけじゃなく、足の上げ方、下げ方、その後の腕の振りを速くしたり、遅くしたりと1球1球、工夫している。
 加えて、球が遅いわりに時々、思い切って高めの真っすぐを投げ込む。もちろん、これも計算で、いくら低めは長打が出にくいと言っても、低めばかり投げていては打者の目が慣れ、ボールゾーンに行く球は見極められる。だから時に高めに見せ球を投げ、今度はそれと同じ軌道から落とす。
 頭と体のすべてを駆使し、たくさんの引き出しを使いながら打者と戦っている男だ。

 よく真っすぐが速い投手が攻撃的なピッチングと言われるが、石川だって、まったく逃げていない。俺は無造作に真っすぐを投げている投手より、よほど攻めていると思う。
 いわば、130キロの本格派だね。

写真=BBM
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