一昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。 本気で走れば、俺だって……

ややお腹周りが気になるか
今回は『1972年2月14日号』。定価は90円。
プロ15年目の32歳。野手としては脂の乗り切った時期だが、この人の場合、180センチ90キロ(公称)と、違う意味、いや、言葉どおりに脂が乗っている。
ご存じゴロちゃんこと、
阪神・
遠井吾郎だ。71年は打率.224と不振に苦しんだが、翌年、甲子園での合同自主トレのランニングは変わらずマイペース。
関取並みの大きなおなかを出しながら、いつも一番最後を走っている。
「遠井がトップを走っている姿を一度も見たことがない。あの体ではどだい無理な話だけど」
と周りの記者たちがささやけば、
金田正泰新ヘッドコーチも、
「あの男はハッスルしているのかどうかさっぱり分からん」
とクビを傾げていた。
しかし本人は悠然とした様子でこう言う。
「俺が総力で走ったら、体力があるからものすごいスピードになる。本気で走ってみろ、前の連中に体当たりするかもしれないから、危険防止のため、ゆっくり走っているんだから」
今回は小噺でした。
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM