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過去唯一国内FA移籍を果たしたトリプルスリー男とは?

 

 今シーズン、ヤクルト山田哲人がFA資格を取得。3度のトリプルスリーを達成した球界最高の打者だけに、FA権を行使した場合はどのチームも欲しがるはずだ。もしFA移籍となれば、トリプルスリー達成者としては史上2人目となる。では、初めてFA移籍したトリプルスリー達成者は誰なのかご存じだろうか?

紆余曲折の末に東北福祉大に進学


広島時代の2000年、打率.315、30本塁打、30盗塁でトリプルスリーをマークした金本


 NPBでこれまでにトリプルスリーを達成した選手は10人いるが、トリプルスリー達成後にFAで国内他球団に移籍した唯一の選手が金本知憲だ。

 金本は東北福祉大学野球部で主力として活躍し、1992年ドラフト4位で広島に入団。しかし、東北福祉大に入るまでは紆余曲折があった。

 広陵高卒業後、金本は法大野球部のセレクションを受ける予定だったが、広陵野球部監督のミスにより受けられず。1年の浪人生活を送り中大硬式野球部のセレクションを受けようとするも、またもや広陵野球部監督のミスで受けられなかった。その結果、大学に行く道が閉ざされ、社会人野球の誘いもなく、ヤクルトの入団テストを受けるも不合格と厳しい時期を送ることになる。

 しかし、運よく知人から当時野球に注力しつつあった東北福祉大を紹介されたことで入学を決め、一般入試で合格。野球部では後にチームメートとなる矢野輝弘や、佐々木主浩斎藤隆らとともに活躍し、4年時には全日本大学野球選手権大会で念願の優勝を果たした。仙台六大学リーグでは、52試合に出場して通算打率.382と好成績を残し、大学日本代表にも選出。この活躍を受け、金本はドラフト4位で指名され、広島に入団することとなる。

クビを覚悟したルーキー時代


 念願のプロの世界に入ることができた金本だが、入団当初は細身の体つきだったこともあり、チームからそこまで大きな期待はかけられていなかった。実際に入団後2年間は結果を残せず、金本より後に入った世代がどんどん台頭したため、金本はチームをクビになることも覚悟したという。

 それでも筋肉トレーニングで基礎を鍛え、疲労で気を失うほどの猛練習を自分に課したことで金本は少しずつ結果を出し始める。また、当時の山本一義ヘッドコーチに打撃技術を教わったことも追い風となり、1994年には一軍に定着し、90試合に出場。翌1995年以降はレギュラーとしてチームに欠かせない存在に成長した。

トリプルスリー達成、広島不動の四番へ


 広島在籍時のハイライトは、やはりトリプルスリーを達成した2000年だ。前年に本塁打と打点でキャリアハイの数字を残し、サイクル安打も達成していた金本は、この年も打撃好調で、シーズン中盤からは四番に抜擢。四番に座ってからも、順調に数字を積み重ね、終盤には野村謙二郎以来となるトリプルスリー達成の可能性が浮上した。

 トリプルスリーが見えてきた時点で一番のネックだったのが盗塁。金本はそれまで20盗塁に到達したことがなかったため、30盗塁に到達できるのか多くのファンが心配した。しかし、順調に数字を積み重ねて30盗塁を達成。ところが本塁打がなかなか30本に到達しなかった。残り4試合の時点で29本とリーチをかけていた金本だが、3試合を消化しても本塁打は出ず。このままトリプルスリー未遂のまま終わるかと思われたが、最終試合で見事に30本目を放ち、大記録達成となった。

 球界を代表するバッターに成長した金本は、翌2001年は四番でフル出場を達成。また、この年は歴代6位となる128四球を記録しており、当時の金本がどれほど相手から恐れられていたのかが如実に分かる。

前人未到の大記録を樹立


FAで移籍した阪神でも主軸として活躍した


 もはや広島の象徴ともいえる存在となった金本は2002年に国内FA権を取得。本人は広島に愛着があることからFA権の行使を悩んでいたが、チーム首脳との話し合いが物別れに終わったことでFA移籍を決断した。その際、阪神の星野仙一監督に誘われ、阪神に移籍することとなった。

 縦じまのユニフォームを着ることになった金本は、2002年に調子を落として活躍が懸念されたが、1年目からチームの主軸として打棒を発揮。見事にリーグ優勝に貢献した。翌2004年には自身初となる最多打点のタイトルも獲得した。

 忘れてはならないのが広島時代の1999年から続いていた「連続試合フルイニング出場記録」だ。2006年には904試合連続フルイニング出場の世界新記録を達成し、その名を歴史に刻むと、その後も数字を伸ばし続け、最終的に1492試合に到達。連続イニング出場記録も1万3686イニングで、こちらも前人未到の世界記録となった。

 トリプルスリーを達成した選手の中で唯一FAで国内移籍し、移籍先の阪神でも躍動した金本。ヤクルト・山田の去就がどうなるのかまだ分からないが、FA移籍した場合は金本のように移籍先でも活躍できるのか、その行方に注目したい。

文=中田ボンベ@dcp 写真=BBM
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