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2020ドラフト

プロ志望届を提出した高橋宏斗は究極のメンタリティーの持ち主

 

12球団OKの姿勢


中京大中京高・高橋宏斗は10月6日、プロ志望を表明。8月の甲子園交流試合(対智弁学園高)の段階では「基本、大学進学です」と語っていたがその後、状況は大きく変わった


 中京大中京高の154キロ右腕・高橋宏斗(3年)が10月6日、プロ志望届の提出を表明した。

「最初は大学進学を予定して、それが、思うような形でうまくいかなかったんですけど、小さいころからの夢をあきらめきれずに、いずれはプロ野球選手になる夢があった。それに一歩でも早く、近づければと感じています」

 意中のチームはない。高橋は「入れることに感謝を持ってやっていきたい」と、12球団OKの姿勢を明かした。中京大中京高・高橋源一郎監督によれば、NPB全12球団が興味を示しているという。この日の記者会見を受けて、高橋監督は全球団に対して「プロ志望」の意向を伝えた。今後、急ピッチで面談などの日程が組み込まれていくはずだ。素材、将来性からもドラフト1位指名が有力視。大学進学から一転、高橋の決断によって、各球団ともドラフト戦略を練り直すこととなる。

 プロ志望届の提出期限はドラフト会議2週間前に10月12日に設定されている。高橋の決断はなぜ、このタイミングとなったのか――。

 10月6日は志望校だった合格発表の日も、残念ながら吉報は届かなった。昨年の合格倍率は5.9倍という超難関校。高橋と同じ右腕として慶應義塾高、慶大でプレーした兄・伶介さんの影響を受けて、神宮球場での登板を夢見ていたが、その願いは通じなかった。

「結果が出た瞬間から、自分が落ち込んでも何も変わらないので、次の目標へ向かって、前に進んでいこうと思いました。(大学とプロ)両方を視野に入れている部分もあったので、野球のほうにも重きを置いてきました」

 究極のメンタリティーの持ち主である。兄からの言葉(メール)も支えになった。

「それが、一番合った選択肢だったと思ってやれ、と。大学受験に向けてきた約9カ月ですけど、その時間は合格、不合格に関わらず、一人の人間として成長できました。自分自身を見直す機会にもなったので、この時間は決してムダではなかったと思います」

甲子園で得られた自信


 大学進学を視野に入れながらも、プロで勝負したいと確信を持ったのは、8月の甲子園交流試合(対智弁学園高)だという。

「(1月末に)センバツ出場の権利を得たときに、(3月末からの)大会を通じて今後の進路は決めていこうと思ったんですが、それが中止となり、自分の中でも迷いが生じたんですけど、夏の1試合でありますが、交流試合で一冬かけて成長した部分を見せられた。9回に(この日の)最速153キロを計測。本調子ではない中でも、悪いなりに修正できたのは、プロ野球選手を目指していこうという、自信を持つことができました」

 今秋、後輩たちは県大会優勝で、東海大会出場を決めた。高橋は打撃投手を買って出るなど、2年生以下のレベルアップのために一肌脱ぎ、自身の鍛錬にもつなげている。

「現時点ではプロで活躍できるような選手ではないので、ドラフトまでにワンランク、ツーランクでも上げていきたいと思います」

 謙虚なコメントの裏にある、貪欲な姿勢。

「多くの人からあこがれられるような選手になりたい。理想の選手像? そういうのを自分自身で、作り上げられたらと思います」

 高橋は大学入試の際には、出願書類(一次選考)の研究目標として「野球普及」について考えた。プロ野球選手が、子どもやプロを目指す選手に対して技術、練習法を発信できる時代にしたい、と。まずは高橋本人が地道に実績を積み上げ、影響力ある野球人になる。ビジョンは明確だ。勉強に充てた時間は明らかに「野球人・高橋」を大きくさせた。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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