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3球団での最多勝へ! ラクをして投げたい涌井秀章にうってつけの球種とは?

 

10月8日現在、ハーラーダービートップの10勝、防御率3.06をマークしている涌井


 9月30日に10勝目を挙げた楽天涌井秀章は、この勝利でパ・リーグでは初となる3球団での2ケタ勝利を達成した。パ・リーグ一番乗りでの2ケタ勝利に加え、最多勝に一歩前進する1勝だ。楽天での最多勝獲得は岩隈久志(2008年、現巨人)、田中将大(2011、13年、現ヤンキース)に続き3人目となる。34歳で獲得となればチームでは最年長だ。パ・リーグでも35歳で獲得した今井雄太郎(阪急)、和田毅ソフトバンク)に次ぐことになる。最多勝の最高年齢は37歳で獲得した下柳剛阪神)で、2000年以降に30代で獲得した人数を見てみると、セ・リーグは8人だが、パ・リーグではわずか4人だ。ベテランになってから獲得するのがいかに難しいタイトルかが分かる。

 だが今季の涌井を見ていると、年齢はもちろん、その難しさを感じさせない。

 昨オフにロッテから楽天に移籍し、再起を図った涌井は開幕から8連勝。34歳のシーズンながら、100球を超えた登板は16試合中14試合だ。試合終盤になっても球速が落ちることはなく、完封した8月5日のソフトバンク戦(楽天生命パーク)では9回にもこの日の最速である149キロの直球を投げ込んでいる。さらに9回を132球で終えるなどその投球術もベテランならではの技術だ。今季から投げ始めたシンカーをはじめとする多彩な変化球を駆使し、打者を圧倒する涌井の投球は若返りを図るチームの中で貴重な存在となっている。

 ちなみに春季キャンプで小山伸一コーチに教わった握りを自分なりにアレンジしているシンカーは「ストライクゾーンの中で変化しているため、打者が振りにきたとき、そこからずれていくので『ボールがない』と思わせるイメージ」だという。さらに「僕は性格的にラクをして投げたい人なので、このシンカーはすごくいいです。長い回を投げられる要因の一つにもなっていると思います」と笑顔を見せる。

 海の向こうではダルビッシュ有(カブス)がメジャー・リーグでは日本人初となる最多勝を獲得。「一緒にプロ入りしてずっと競い合ってきた仲。一番気になる存在でもあるし、あいつのニュースだけは結構、気になりますね。あいつが意識してくれるように頑張りたいと影で思っています」と刺激を受けた。まだまだ衰えを見せない涌井が次に見据えるのは両リーグ最年長記録に並ぶ37歳での最多勝獲得か、はたまた200勝か(10月7日時点で143勝)。

 10月7日の日本ハム戦(札幌ドーム)ではチームも引き分け、勝ち負けはつかなかったが、プロ野球史上初となる3球団での最多勝獲得に向け、残りのシーズンも勝ちを積み上げていく。

文=阿部ちはる 写真=BBM
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