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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

大量8人! 今季途中に一軍デビューした広島の若鯉たちの現在地は?

 

2年前のドラフト1位も待望のデビュー


一軍デビューから好打を見せる宇草孔基。来季レギュラー争いに参入できるインパクトを残したい


 今季は期待を裏切る形になり、優勝争いに参入することなく下位に沈んでしまった広島。だが、その代わりに、と言っては何だが、ファームで実績を残した若い選手たちが次々と「一軍デビュー」を飾った。開幕一軍に入ったドラフト1位の森下暢仁は別格として、このシーズン中に初めて一軍の舞台に立った選手は何と早くも8人。今後の展望なども含めて、順に紹介していこう(成績は10月9日現在)。

 8人中、投手は1人だけで、育成契約から9月26日に支配下選手登録を勝ち取り、10月8日の阪神戦(マツダ広島)で早速一軍デビューを飾った藤井黎來だ。初登板では結構緊張があったようにも見受けられたが、先頭の梅野にヒットを許すも、そこから3人を打ち取り、1回無失点と上々のデビューだった。ストレートとフォーク系を中心に20球。この日は最速146キロだったが、ストレートの威力はありそう。翌9日も1イニングを2三振で三者凡退に抑えており、経験を積んでいけばショートリリーフから道が開けるかもしれない。

 捕手では2年前のドラフト1位、中村奨成が待望のデビューを果たした。代打で4打席立って、残念ながらヒットは出ず。また、今回は打撃好調を買われての一軍経験ということだったのかもしれないが、マスクをかぶる機会も一度もなかった。捕手の場合はなかなか一軍でキャリアの少ない選手にゲーム終盤のマスクを任せるのが難しいところもあるが、見てみたかった気もする。いずれにしても、今回の経験を生かして、再度一軍にチャレンジする機会を目指してもらいたいもの。

 内野手では、8月7日、阪神戦(マツダ広島)で、セーフティースクイズでプロ初安打、さらには適時三塁打、守っても美技のデビューを飾った羽月隆太郎が何と言っても鮮烈だった。子どものころからのカープファンとあって、「試合前から試合後、そして今と、自分がマツダスタジアムで試合して、ここに立っていることが信じられなくて……」と語ったお立ち台も印象的。打率が.200まで下がったところでファームに戻っただけに、コンスタントに打力を発揮できるようになることが今後の課題か。チームに元気を与えるキャラクターだけに、これまた一軍で見たい素材だ。

 内野手ではほかに桑原樹が3打席立ったが初ヒットならず。さらに現在は、ファームで将来の四番に育てるべく英才教育を受けてきた林晃汰が一軍にチャレンジ中だ。自分の持ち味を出そうとフルスイングを貫くも、やはり相手が一軍だと落ちる球に崩されるケースが多く7打席目までは5三振。それでも8打席目でついに右翼線二塁打と、長打でプロ初安打をマークした。これで気持ちにゆとりができれば、いい変化が見られる可能性もあり、楽しみ。

来季にはレギュラー争いも


 外野手は大盛穂正隨優弥、宇草孔基の3人だが、それぞれに結果を残した。

 出世頭は大盛だ。高打率をマークし、西川龍馬の戦列離脱後はしばらくセンターのスタメンの中心となった。プロ初安打を内野安打で記録したように、まずは足で魅せたが、出場を続けるうちに左方向へのヒットやパンチ力も見せてホームランも2発。ただ、対右投手には打率.307なのに対し、対左投手には.143なのが課題で、相手先発が左投手のときはなかなかスタメンに使ってもらえない形に。足と守備では合格ラインのものを出しているだけに、対左の対策が待たれる。

 正隨は、7打席立ってヒットは1本だったが、その1本が見事に持ち味を発揮した右中間への豪快なホームランと、爪痕を残した。あとはヒットの確率をどれだけ上げていけるか。右の代打要員はあまり若い選手がいないだけに、チャンスのあるポジションではある。

 そしてレギュラーへの距離という意味では最も楽しみなのが10月6日のデビュー戦(対阪神)で左中間二塁打を放つなど活躍を見せた宇草孔基だ。ファームでさまざまなフォームを試行錯誤してきたようで、右にも左にも打てる懐の深い打撃を見せている。動きながらとらえるような感じの打法だけに、長く調子を維持できるかどうかという面はあるかもしれないが、ここまでは手ごたえ十分。守備、走塁ではミスが出るときもあるが、盗塁も積極的に狙っており、経験を積んでいけばというところ。現在、一番打者に決め手となる存在がいないこと、レフトは長野久義ピレラとレギュラー級の年齢が高いこともあり、シーズン終了まで打撃の調子が維持できるようなら来季はレギュラー争い参入もある。

 このほか、ファームで抑えの切り札になっている2年目の田中法彦が今後、一軍デビューのチャンスをつかめるのか、また、一軍デビュー組とは話が違うが、シーズン前半はファームで思わぬ低打率にあえいでいた2年目の小園海斗がここにきて調子を上げてきており、今季初の昇格があるのかなど、まだまだファームから上がってくる可能性のある人材には楽しみがいっぱい。今季、ペナントレースではあまりいいところが見せられなかったカープだけに、せめてこれから来季への夢を見せてもらいたいところだ。

文=藤本泰祐 写真=BBM
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