週刊ベースボールONLINE

ベースボールゼミナール

巨人・坂本勇人選手の打撃の特徴は?/元ソフトバンク・柴原洋に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は打撃編。回答者は現役時代に巧打の選手として活躍した、元ソフトバンク柴原洋氏だ。

Q.巨人の坂本勇人選手が昨シーズン、40本の本塁打を放ちました。三振数はキャリアワーストの123を記録する中で、173安打、打率も.312と高い数字を残しています。現在の坂本選手の打撃にはどのような特徴があるのでしょうか。これまでとの変化も教えてください。(東京都・15歳)


昨季は40本塁打をマークするなど長打力が増している坂本


 首位打者を獲得した2016年以前は、3割を打つシーズンもあれば(.311の12年は173安打で最多安打)、2割6分台に終わるシーズンもあるなど、成績が安定しませんでした。それでもレギュラーに定着した高卒2年目の09年から15年までシーズン125安打以上を打っているので、すごいことなのですが、このタイミングで過去の自分を捨て、打撃をゼロから作り直す決断をしたことを聞きました。そこには松井秀喜(元ヤンキースほか)さんの、「重心を後ろに残してボールを待つ」というアドバイスも大きく影響しているようです。

 そのおかげで、軸にしっかりと体重を残し、これを中心に鋭いターンで打球を弾き返すことができているのが現在の坂本選手なのではないでしょうか。とはいえ、入団当初から前さばきのうまいバッターで、現在もその前さばきは健在です。前に出されそうな変化球に対しても必要な分だけはしっかりと前に移動しつつも、現在はそれ以上は前に行かず、ストップをかけてバット操作でヒットゾーンへと運んでいます。

 以前はアウトコース低めが弱いというデータもあったようですが、当時は軸が前に出されて泳ぎ過ぎたために引っ掛けていたものが(つまり、打たされていたということです)、今は泳がされることはないので、ボール球は見極めることができ、そこからゾーンに入ってくれば前さばきでしっかりと逆方向にはじき返すことができています。

 インコースにはめっぽう強く、バッテリーは容易には攻められません。坂本選手を攻略しようと思うと、アウトコース勝負となるのですが、もはや15年以前の坂本選手ではないので、率も残るし、安打数も稼げて、良い形でとらえればスタンドにも届く。これらのことがあって、昨季の40本塁につながっているのではないでしょうか。

 キャリアもあって、決め打ちもします。しかも、ものすごいスイングで。三振の数が増えたのは確かですが、ゴロもフライも三振も同じアウトと割り切ったのでしょう。守るほうからすると、振ってこられるほうが怖いですし、坂本選手には振っていく中でコンタクトする技術もある。怖いバッターですよね。

●柴原洋(しばはら・ひろし)
1974年5月23日生まれ。福岡県出身。北九州高から九州共立大を経て97年ドラフト3位でダイエー(現ソフトバンク)入団。11年現役引退。現役生活15年の通算成績は1452試合出場、打率.282、54本塁打、463打点、85盗塁。

『週刊ベースボール』2020年10月5日号(9月23日発売)より

写真=BBM
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング