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川口和久WEBコラム

中日・大野雄大が証明した継投野球を生かす「完投」の力/川口和久WEB

 

力が抜け、打者のタイミングを崩すフォーム


今季8勝の大野


 中日ドラゴンズの2位が見えてきた。
 原動力は間違いなく、大野雄大だ。
 今年、8完投、4完封はどちらもキャリアハイ。昨年、というか今年の前半戦までは、あてにしていたらこけ、あてにしないといいピッチングをするというタイプだったが、すっかり首脳陣の信頼を得た。

 技術的には体の力が抜けてきたことで、打者がタイミングを合わせにくくなっている。
 具体的に言えば、今までの大野は動きが硬かった。足を突っ張るようにし、上体の力で腕を振っていたが、今は違う。
 足の上げ方が柔らかく、グラブでポンとヒザをたたく動作が大野の中で力を抜こうという合図になっているようだ。
 そこから、すぐ上体を使うのではなく、まず腰が打者側に出て、腰をひねりを使い、上体が遅れて出るようになった。
 打者は投手にフォームに合わせてタイミングを取るから、この間をつくることで、体を前に出させ、凡打にしている。
 今までより打者寄りで球を離しているので、球の出所も見えづらい。

 技術的な修正もそうだが、これは下半身が強くなり、股関節をうまく使えていることもある。彼はかなりの走り込みを重視しているらしい。下半身の強さで勝てる投手になったと思う。

 もう一つ感じるのは、よく現代野球は継投が確立し、完投が必要ないと言われるが、菅野智之がいる巨人や今の中日の好調さを見ると、必ずしもそうではないことが分かる。

 むしろ継投野球でリリーフ投手が酷使されているから、逆に週に1回でも完投できる投手がいることが大きい。
 肉体的だけではなく、メンタル面でも休めるから、いつもブルペンをフレッシュな状態に置いておける、というのかな。

 もともと中日はいい投手がたくさんいるのに機能しなかった時代が続いている。昔から先発を酷使しないために継投野球を進めていたチームだが、そのためにリリーフ投手が酷使され、数年でつぶれてしまう傾向もあった。
 大野のような存在が1年間フルに活躍すれば、一気に投手陣が変わる可能性もあり、優勝戦線に入っていく可能性もあるだろう。

 あと、もともと思っていたのだが、正直、週に1回、100球前後で5回を投げての勝ち投手にどのくらいの意味があるのかな。
 もう5回の勝ち投手は0.5勝でいいんじゃないか。残り4回をほかに託して、仮に2ケタ勝ったってエースとは言えないでしょ。

写真=BBM
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