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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

指名選手はまさかのソフトボーラー!? 忘れられない2011年秋のドラフト取材

 

周囲をアッと言わせたサプライズ指名で日本ハムに入団した大嶋匠


 月日が経つのは早いもので、今年のドラフト会議まであと10日あまりとなった。『週刊ベースボール』でも2週連続でドラフト企画を組むなど、運命の「10.26」にむけて準備を進めている。

 いったい誰を指名するのか、指名されるのか──。ドラフト当日までまさに情報戦。特に今年は新型コロナウイルスの影響もあり、スカウト活動や私たちの対面での取材も制限され、例年以上に予想が難しいのが現状。これまで何度なくドラフトではドラマが生まれてきたが、今年はかつての大谷翔平佐々木朗希などの超ビッグネームこそいないが、それだけに「隠し玉」的な選手が指名されるかもという期待感はある。同時に取材する側にとってはドキドキの1日ではあるが。

 そういう意味では、私にとって忘れられないのが2011年秋のドラフトだ。当日は現在ソフトバンクでプレーする嘉弥真新也の取材担当でJX-ENEOS本社に派遣され、無事にドラフト5位で指名。本人の記者会見で質疑応答をしている中、当日の陣頭指揮を執っているアマチュア班のキャップから携帯電話に着信……。取材中だったため、その瞬間は出れなかったが、ショートメールを確認すると「日ハムがソフトボーラー指名。すぐに早大に行ってほしい」と。

 担当球団の日本ハムが完全ノーマークだった超隠し玉、早大ソフトボール部の大嶋匠を7位で指名。カメラ派遣、記者派遣もしておらず、嘉弥真の取材を終えて電車、タクシーを乗り継いで猛ダッシュで早大へ。着くころには記者会見もすでに終盤になってしまっていたが、大嶋が会見後にも快く単独取材に応じてくれ、率直な思いやプロでの決意を、やさしい笑顔を浮かべながら話してくれた。

 プロ7年間で残した成績は15試合出場、3安打、0本塁打、1打点、打率.167。ソフトボール界からの挑戦は決して成功とはいえないものだったが、鎌ケ谷でひたむきに汗を流していた姿、またいつも周囲を明るくしてくれる、あの日のドラフトのときと同じとびっきりの笑顔は、いまも鮮明な記憶として残っている。

 そんな大嶋はいま、採用試験に見事に合格して群馬県高崎市の職員に。さらに高崎市役所のソフトボール部に所属し、再びソフトボール選手としてプレーを続けている。

文=松井進作 写真=BBM
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