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[MLB]ダルビッシュ、真っすぐに磨きをかけ、さらなる進化を

 

昨季以上にフォーシームの回転率に磨きをかけ最多勝を獲得したダルビッシュ。そこにさらにボールゾーンでどれくらいバットを振らせるかもトライしていく


 20年シーズン、カッター&スライダーを軸に成功を収めたカブスのダルビッシュ有。しかし終盤の3試合(9月9日から20日)にトータルで10失点、2敗を喫したことでピッチングを見直した。今季24パーセントだったフォーシーム&ツーシームの真っすぐ系を、最終戦(9月25日)のホワイトソックス相手に34球、36パーセントと増やした。

 主砲ホセ・アブレユには1、2打席目、すべて真っすぐで右飛、遊飛に打ち取った。「今日の真っすぐだったら押せる自信があった。前回(8月23日)変化球をたくさんホワイトソックス打線に投げている。プラス、この2試合は変化球を待たれている感じがしたので」。

 過去2年間、ダルビッシュはフォーシームのスピン効率に取り組んでいた、もともと回転率は毎分2500台でMLBでもトップクラスだが、その回転数をうまくボールの動きに結びつけられていなかった。そして特に左打者にホームランを打たれていた。例えばヤンキースのゲリット・コールの回転数はダルビッシュより少ないがスピン効率は99.3パーセントである。カブスの投手コーチやデータスタッフの協力を得てメカニックをアジャスト、スピン効率は2019年の72パーセント(MLB522番目)から、87パーセント(同279番目)に上がった。

 279番目は上のほうとは言えないが回転数が高いから、結果ダルビッシュの真っすぐは19年がメジャー平均より2.54センチライズしていたのが、6.35センチと大きくライズするようになった。そして先発投手の中で真っすぐの空振り率が1位の42.3パーセントだった。19年の29.3パーセントより大幅に上昇した。これだけ空振りが取れるなら真っすぐをどんどん投げればと思うだろうが、基本カッターなど曲がり球のほうが彼の場合はストライクを取りやすく、それで完全に敵を圧倒できていた。

 だが相手も研究してくる。「長い目で見ると、カッター、スライダーでずっと投げ続けるのは難しいなと感じたので、真っすぐもうまく混ぜていくと、甘いカッターもゴロになってくれるし、将来を見据えた感じです」と25日の試合後に説明していた。ちなみに先発投手で次にフォーシームの空振り率が高いのはレッズのルイス・カスティーヨで37.2パーセント、メッツのジェイコブ・デグロムの37パーセントである。ただデグロムは全投球の45パーセントがフォーシームで相手がフォーシームを待っていてもそれだけ空振りになる。

 ダルビッシュについては、打者はカッターを待っていて、そこにフォーシームが来て意表を突かれる形。現時点ではデグロムのフォーシームの質にはかなわない。改善のポイントは本人が明かしているが、ライズするとともにフェード気味の動きになること。カッターやスライダーと反対方向に動くわけでより有効になる。

 ダルビッシュは今季ストライクゾーン率が55パーセントだった。これはドジャースのダスティン・メイ(55.2パーセント)に次いで2位。ゾーン内にどんどん投げ込めばどうしても被打率は上がる(.217)。

 一方でツインズの前田健太は43.7パーセント、インディアンズのシェーン・ビーバーは40.5パーセントとボール球を振らせて、被打率も.168、.167と低かった。真っすぐに磨きをかけ、ボール球を振らせ、さらなる進化を目指すのである。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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