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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

引退表明の西武・高橋朋己が目指した「太く、短く」の形とは

 

唯一無二の武器で


独特の腕の使い方から繰り出される快速球で打者を封じ込んだ


 かつて巨人村田修一は言った。「チャップマンよりも高橋のほうが速く感じる」。日本代表の四番を務めた男は、WBCで当時160キロを連発していたキューバ代表の左腕を知っている。「高橋は球の出どころが見えづらいから、手元に来るとボールが迫るように感じるんです」とリリーフ左腕の快速球を手放しで称賛した。

 高橋――昨日、引退を表明した西武高橋朋己のことだ。高校時代までは最速128キロ。プロ入りは遠い世界だった。だが大学入学時に突如、眠っていた能力が目覚め、140キロ台を突破。ヒジが遅れて出てくる独特な投球フォームも唯一無二の武器となり、快速球を生むようになった。

 2013年、西濃運輸からドラフト4位で西武入団。2年目の途中に守護神になると29セーブをマーク。翌年も22セーブを挙げた。しかし2016年、開幕直後に左ヒジ痛で離脱すると、7月にトミー・ジョン手術を受けた。17年10月1日の日本ハム戦(札幌ドーム)で約1年5カ月ぶりに一軍実戦復帰を果たすも、18年開幕早々に左肩を故障。治療とリハビリに時間を費やしたが早期復帰のメドが立たなかったことから、19年からは育成選手に。ふたたびマウンドに立つことを目指したが、その夢は叶わなかった。

10月20日に行われた引退会見。晴れやかな表情を見せた(球団提供)


「8年間、プロ野球選手としては短い時間でしたが、すごく濃い、いい時間を過ごすことができました。今年も育成選手として契約してもらえたので、何とか復帰できるように頑張ってきました。治療、トレーニング、食事だったりと、自分の中ではすべてやり尽くしました。それでも8月にバッティングピッチャーとして投げたときにすごい痛みがあって、いい意味であきらめがついたので自ら決断しました」

 もともと「太く、短く」がモットーだった。トミー・ジョン手術から復帰した際、「どこでつぶれてもいいと思っています。でも、早過ぎました(笑)。さすがに、もう少し頑張りたいなという気持ちがあります」と語っていたが、「太く、短く」の真意も教えてくれた。

「僕が目指す『太く、短く』の形は記録ではなく、ファンの記憶だと思っています。『タイトルを一つも獲っていないけど、すごかったな、あの選手』と言われたいんです」

 高橋の願いどおり、その快速球がライオンズファンの脳裏に焼き付いているのは間違いない。

「球団からは、リハビリで苦しいなか、変わらずいろんな選手と接してくれてありがとう、と言ってもらえたのがうれしかったです」

 10月30日のイースタン・巨人戦(CAR3219)がラストマウンドになるという。最後の勇姿もファンの記憶に永遠に残ることだろう。

写真=BBM
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