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『SMAP×SMAP』がきっかけ。「松坂世代」の生みの親が語る誕生の経緯、同世代の特徴とは?/Daiki’sウォッチ

 

松坂世代という言葉が生まれてから22年。1980年生まれの世代は今年で40歳を迎えています。もう数年たつと四半世紀。スポーツ界、野球界では誰もが知る言葉となった「松坂世代」というキーワード。『松坂世代』という著書を世に生み出し、この言葉の生みの親ともいわれるフリーライターの矢崎良一氏に松坂世代の“過去”“現在”“未来”について今回、松坂世代でもある私、田中大貴がインタビューさせていただきました。

木村拓哉を松坂大輔に置き換えて


「松坂世代」のシンボルである松坂


――矢崎さん、松坂世代が今年も2人、引退を発表しましたね。

藤川球児君の引退は意外でした。メンタル的には50歳くらいまで現役を続けられる選手だと思っていましたから。やらせてあげられる環境、チームがあるのであれば続けてほしいと心底思いました。ただ同じ松坂世代である江草仁貴君に話を聞いたときに感じたのは、メンタルの部分よりも肉体的な部分でのダメージが非常に大きいということを知らされました。あの98年から僕らが想像を絶するような身体的な疲労が蓄積してきているんです。江草君の言葉を聞いて腑に落ちました」

――松坂世代がプロの世界で残り1ケタになりました。一人ひとりの存在意義が非常に大きい感じませんか?

「大きいですよね、それは。あと5人になってからの一人ひとりが非常に大きく感じます。渡辺直人君も選手兼任コーチとして、まだ現役を続けてくれると思っていました。楽天が彼のポジションを許してくれるうちは現役続行だと見ていました。自分で判断しての引退。松坂世代の中で渡辺直人という存在は社会人野球界を背負ってプロの世界に進んだ選手でした。松坂世代の社会人野球出身といえば三菱ふそう川崎の渡辺直人と言われる選手。茨城の県立牛久高校から城西大学、そして社会人。楽天、横浜・DeNA西武、そしてまた楽天……彼がどんな経歴を刻んでいくのか楽しみで仕方なかったんです。また1人、大きな存在が引退ですね」

――もしかするとあらためてになるかもしれませんが、「松坂世代」という言葉が生まれた経緯を教えていただけますか?

「当時、『SMAP×SMAP』というフジテレビの番組で木村拓哉さんが同い歳のさまざまなフィールドで働く皆さんと対談をするコーナーがあったんです。その中で酪農家の方が登場した時、“僕は顔では木村さんに負けるけれど、牛のことだったら絶対に負けない”と話していて、これだと思いました。木村拓哉さんを松坂大輔君に置き換えて、同い年の皆さんの声を聞き、人生を描きたいと。当時はジェネレーションという言葉が芸能界で流行りつつあったのも相まって松坂大輔にジェネレーションという言葉をつけて、“松坂世代”という言葉を編集部の皆さんと一緒に生み出しました」

「松坂世代」の特徴


今季限りでの引退を表明した藤川


――松坂世代という言葉が代名詞となって、この世代は一気に世に知られました。矢崎さんが取材を続ける中で彼らの共通項はどのあたりに感じられましたか?

「1つ上の世代は小野伸二らが率いるサッカー黄金世代。その次に来たのが野球黄金世代の松坂大輔君たち。当時は経済的に家庭が裕福になり始めた時代。松坂大輔君は少年時代に野球と剣道を、村田修一君は野球とピアノを習い、野球ではなくもう1つ2つ習い事ができた時代。今までと少し傾向は違いました。みんな少し余裕があって、卑屈な人間がいなかった。甲子園大会を取材していても、今もとげとげしい人間がいない世代。さらに松坂世代のこれまでを分析すると、松坂大輔君が序列を作ったとも言えると考えています。圧倒的に超越した同級生がいて、競争したいとい思いや同い歳を蹴落としてでもという考えを超越している世代。彼らはそれを10代で感じてきた人間たち。共通項は強く感じますよ」

――では、松坂世代が生み出したものはどんなものだと感じていますか?

「松坂世代という言葉が生まれ、松坂大輔君というスパースターがいたお陰で横のつながりが早い段階で横断的になりました。横のつながりに対して壁がない世代が形成されました。高校時代に日本代表が組まれたときも横のつながりに強い一体感がありました。本当に早い段階でナショナルチーム感が生まれた子たちでした。松坂大輔君が光っているから僕らも光っていられるということを納得できる人間たちが生まれました。同世代の横のつながりが素晴らしい事を世に発信できる時代を築きましたよね」

――古田敦也さんの世代や松井秀喜さんの世代も有名ですが、ほかの世代とは違う特徴が松坂世代にはありましたか?

「あなたが目の前にいるから手前味噌のように感じるかもしれませんが、松坂世代のしのぎを削り合ってきた人間が20歳を超えて野球以外のさまざまな場所で活躍している特徴があります。上重聡君や田中大貴君というテレビ局に2人のアナウンサーが誕生し、あなたたち2人が松坂世代のスポークスマンとなりました。より松坂世代が世に知れ渡る流れが出来ました。これがほかの世代とは違う傾向であることは間違いありません。野球界以外でも活躍を見せる人間が年々増えていきました。ここに面白みがあると僕が感じています」

およそ四半世紀にわたって松坂世代を取材してきた矢崎氏は松坂世代との濃厚な過去をつぶさに語ってくれました。40代を迎える松坂世代の可能性はまだ予想がつかないものがあり、松坂大輔がいることにより、まだ知らない松坂世代が予想もしなかったところで活躍する可能性があると予想する矢崎氏。そんな彼に次回では松坂世代の現在地と未来についてたっぷりと語っていただきます。

取材・文=田中大貴 写真=BBM
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